久しぶりにクライストチャーチ以外の場所からうちに泊まりにくる人がいて、おみやげにソーセージをいただいた。ニュージーランドのソーセージは、やわらかーな肉をうすーい皮に包んだ、いわばとってもナマな感じのもので、それがおみやげとは一瞬「エ!」と思ったのだが、大事にパックされたソーセージは無事にうちまでやってきた。なんでも、地元のファーマーズ・マーケットで手に入るお気に入りの一品ということだった。
せっかくのおみやげである。正式にはバーベキューで炙りたいところ…でも、ソーセージだけをササッとおいしく食べるなら、小ぶりの鉄のフライパンでじーっくり焼くのが一番早いのだ(というかバーベキューとか大げさなのは待てなかったという…)。そしてこのソーセージ、焼いている時からちょっと違った。わたしだってこの国のソーセージは大好きで、そりゃもういろいろ食べているつもりだったのに、焦げ目のつき方も皮がパリィィ…と張ってくる具合も、いつものスーパーで買ってくるものより格段においしそう⁉かじってみたら、やっぱり見た目だけじゃなかった。中身のお味も、ひき肉とスパイスが絶妙ゥゥな…いや、おいしい!これは思わぬ発見⁇
はっきり言って、この国のソーセージが好き…と思う理由には『超簡単おかずだから』というところも大きい。味の違うソーセージを2種類ほど選んで(例えばラムミントとベニソン…のようにさりげなくニュージーランドらしさを出してみることも可能)それこそフライパンで焼き、マッシュポテトと温野菜を添えればディナーができてしまう。日本人的な感覚だと『そんなので晩飯になるか‼』と言いたくなる人もいるだろうが、ニュージーランドでは全然アリだ。種類は本当にいろいろあるから飽きないし、どんなスーパーでもそこそこのものがあるから助かるなあ…という気持ちが強く、いつでも頼りにしすぎていて、最近は「どこの店のアレがイケる」というこだわり方にまで頭が回っていなかった。今回のこのおみやげのおいしさで、そんな怠慢さにカツが入ってしまった。やっぱり食べるなら、これからはちゃんとこだわったものにしよう!と。
しかし、種類が多いと制覇は逆に難しい。まずその遠方からのおみやげの品は、いくらおいしくてもその土地に行かないと手に入らないから諦めるとする。そうなるとなるべく近所で、評判のソーセージを作っているお肉屋さんを探したり、地元の週末市場に出かけてみたり。クオリティの高そうなお店のサーチは何でもない。でも、まさか一本ずつ全種類下さい!みたいな買い方もできないし、とにかく地道に「今回はコレ…」というのを何本か買っては食べて行くしかないのである。目下のお気に入りは〝カンバーランド〟というイギリス風のポークソーセージ…でもそればかり食べたい気持ちを抑えないと新規開拓が進まないというツラさが!
それでも、ソーセージ探しをしていて一番うれしかったことは、なにげに近所にあるお肉屋さんが、実はソーセージでいっぱい賞をもらっているお店だったのを知ったことである。こんな近くに、こんな幸せがあるなんて!でも実は、誰の近所にも素晴らしいこだわりソーセージがあるはず…あなたも案外気づいてないだけ、かも⁉
*Tuckerとはキーウィ独特の言葉で、「食べ物」というよりは「お腹に詰め込むもの」という意味
マツザキ リカ
ニュージーランド在住24年。クライストチャーチを拠点に暮らし、心も体も豊かにするキーウィフードの探求に余念がない。おいしいものも不思議なものも、いただきます!
2021年8月号掲載