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インフレによる増税継続
政府の歳入の4分の3を占める税収は1080億ドルに達したが、コロナ後の財政状況は厳しく、政府は減税を見送った。所得税は収入に応じて段階的に増える累進課税が一般的で、ニュージーランドでも5段階になっている。すなわち0〜1万4000ドル(10.5%)、〜4万8000ドル(17.5%)、〜7万ドル(30%)、〜18万ドル(33%)、そして昨年から設定された18万ドル超(39%)だ。18万ドル超より前の4段階は2010年から変わっていない。当時の年収の中央値は4万400ドルで、7万ドルは「高収入」だった。しかし、昨年の中央値は6万1828ドルで、7万ドルの年収は珍しくない。政府がインフレに合わせて基準をスライドさせなかったことで、国民には負担増を、国庫には自然増収をもたらした。ヒプキンス首相は、所得減税の必要性を認識しつつ「それは今ではない」とした。
分かれる各党の政策
ヒプキンス首相は、アーダーン前首相が「在職中はしない」と宣言したキャピタルゲイン税の導入について「オープン」な姿勢を示した。それ以外は労働党の税政策に大きな変化はない。グリーン党は、200万ドル以上の純資産に2.5%の財産税を課し、所得18万ドル超の税率を45%にするなど富裕層の課税を強化する一方、所得1万ドル以下を非課税とし、定額所得補償(UBI)の導入を掲げた。国民党は所得減税を行うが、18万ドル超の税率を33%に下げることで富裕層に厚く中低所得層に薄い内容になっている。ACT党は、所得7万ドルまでの税率を17.5%、7万ドル超を28%とする簡素化と減税を掲げた。国民党の案より大幅な減税となるが、政府の税収も大きく減る。各党がその支持層へ訴求する政策を掲げた結果、どの党が政権に就くかで、この国の税制や行政はずいぶん違うものになる可能性がある。
大衆課税と人材流出
この国では、豪州ならば非課税となる低所得層にもあまねく10.5%が課税される。また、間接税のGST(付加価値税)においても豪州の税率が10%で食品や教育・医療など非課税対象が多いのに対し、ニュージーランドの税率は15%で除外対象がほとんどない。つまりこの国の税制は「大衆課税」の性格が強い。また、豪州では来年に減税が予定されており、中所得層の税率が低くなる。これによって、豪州への人材流出がさらに促進される可能性がある。
Text:Kazzy Matsuzaki
2023年7月号掲載