2022年1月号掲載
もういいトシをした人間であるわたしがアレに目覚めたのは、クライストチャーチから車でテカポに向かう途中の、ジェラルディンという小さくもうるわしい町でのことである。その町は国内で名の知れたジャムの会社の発祥地であり、観光で立ち寄るお客さんがジャムやらチャツネやらをお土産に買える直営店が人気だった。そうしたら、最近そのお店がおしゃれ感たっぷりのカフェに生まれ変わり、地元の人にも居心地のいいスポットになったのである。カフェで出されるコーヒーや、キャビネットのフードがおいしくてイケてるのは当たり前。店内の空間も明るくゆったりで、得意のビン詰めのいろんな商品も、これまで以上にステキに見えてしまうのだった。
そこのお店の一角に、アレの試飲コーナーがあるのだ…。ハイ…実はアレとは、炭酸水にまぜるとコーラやジンジャーエールができるソーダ・シロップのことでした。わたしときたら、今になってあんな健康でも何でもなさそうなモノにハマっているのである。もちろん、前々から家庭用の炭酸水メーカー用の濃縮シロップが売られているのは知っていた。が、今まで他で見かけた毒々しいオレンジとかラズベリーの真っ赤なシロップは、なんでわざわざおうちであんなの作る?と思うようなイメージだった。でも、ここのお店のシロップたちは、いろんなベリーやブラッド・オレンジ、ピンク・グレープフルーツなど、おしゃれなフレーバーがずらーっと並んで、見た目の色からしてすっごくキレイ。そして、さらにうれしいことに、ここには試飲用の炭酸水とミネラルウォーターのタップがある!こういうものってめずらしいから「ハァー飲んでみたい!」と思っても、まさか片っ端からビンごと買って帰る勇気は出ない。あきらめようかな…と思ったところにこのタップとお試し用の数々のフレーバーのシロップ、そして小さいコップが目に入る…そのセッティングがありがたすぎるのだ。自分で好きなフレーバーのシロップをコップに入れて、炭酸水をシュワァァァ〜!
うわ〜炭酸飲料って、こんなにおいしかったっけ…?こだわりのシロップのちょっと気取った味わいと、自分で濃さを調節できる気軽さが相まって、楽しさもMAXに⁉ シロップのフレーバーによっては炭酸水よりミネラルウォーターが合うものもあり、シュワあり、シュワなしが比べて飲めるのもまたよろし…。あっ、結局こうやってお気に入りが見つけられる以上、何本かは必ずお持ち帰りということになるから、お店にとってもいいシステムなのかも?
というわけで、ジェラルディンで見つけたシュワァ〜!なしあわせは、家に帰っても続いている。炭酸水を買ってきて、いろんなフレーバーのソーダをおしゃれにシュワ〜‼ 既製品のコーラやレモネードよりちょっとだけ大人っぽく、ニュージーランド的な飲み物を飲んでる気持ちになれるのがいい。特に、新しく発見したアップルとエルダー・フラワーの組み合わせなんて、ちゃんとフレッシュなアップルとハーブの香りがして、まさにこの国らしさを感じるお味になっている(とにかく推しなのでベタぼめしたい)。しかもこのシロップ、クライストチャーチならスーパーに行けば手に入ることが判明…あとは、家にあの炭酸水のタップがあったらいいのになぁ…まさかこのトシで炭酸飲料にまで欲を出し始めるとは!そんなことに驚いている新年の初めである。
*Tuckerとはキーウィ独特の言葉で、「食べ物」というよりは「お腹に詰め込むもの」という意味
マツザキ リカ
ニュージーランド在住25年。クライストチャーチを拠点に暮らし、心も体も豊かにするキーウィフードの探求に余念がない。おいしいものも不思議なものも、いただきます!