2022年3月号掲載
クイーンズタウンで初の寿司キャラバンビジネスを始めたSuma’s Sushiの伊藤寿麻さん。10年目を迎える今年、4月のイベントを最後に、ビジネスを売りに出そうと決意された寿麻さんに、起業したときの思いやニュージーランドでの寿司ビジネスについて伺った。
クイーンズタウンで初の試み
10年ほど前、寿麻さんは「小学生に健康的な昼食を食べさせて、日本の寿司の味を伝えたい」と思い始めた。クイーンズタウン近辺では、イベントの売店ではチップスやバーガーばかり、子どもの学校のランチオーダーではソーセージやピザ、パイばかりで、健康的な食べ物がないと感じていたからだ。
寿司のフードキャラバンをやりたいと思い、まず初めに向かったのは、シティカウンシルだった。「10回ほど相談しに行きましたが、初めはダメダメと相手にしてもらえませんでした」と寿麻さん。特にクイーンズタウンやワナカは家賃(場所のレント代)が高く、カウンシルの審査も厳しいため、飲食店の開業は大変なのだそうだ。キャラバンを置く場所は公共の場所は使えず、自分で探し、直接地主と交渉しなければならなかった。場所だけではなく、細かい規定がある。新商品のカレーを売ろうとした時は、カウンシルのスタッフが訪問してきて「1時間毎にカレーの温度を計って」とチェックされたこともあるくらい。それでも、寿司キャラバンがクイーンズタウンで初めてだったためか、イベントのスポットを10カ所以上も獲得。現在は、小学校6校のランチオーダー(週5日)の寿司作りと配達、アロータウンフォースクエアに寿司パックを毎日配達、クイーンズタウンの店舗でテイクアウェイ業務、イベントの準備、パーティなどの寿司プラッター作り、そして材料のオーダーと下準備に忙しい毎日を送っている。
苦労した分達成感があった10年間
「テイクアウトの寿司にしては味が良く、レストランより少し値段が安め」を目指してきたスマ寿司だが、その両立が一番大変だった。
「味にこだわっていても、お客様は安い寿司を選ぶことに悔しく思いました。できるだけコストを下げながら自分の作りたい味とクオリティを保つ努力をしましたね」
また、経理や税金関連の事務仕事を英語で理解するのは難しく、弁護士や会計士とのやり取りも苦労した。開業時に、日本人が嫌いな人もおり、差別されていることがわかった時はつらかったという。
しかし現在は、リピーターも温かいフィードバックも増え、日本の寿司の認知度と健康的な食べ物としての人気の高まりを実感している。
「開店したころに小学生だった子どもたちが大きくなり、寿司が好きで今でも買いに来てくれるのがうれしいですね。つたない英語でもビジネスを立ち上げ、一人でやりくりし、達成感と自信が持てるようになりました」
ニュージーランドの食文化の変化も感じている。「28年前は子どものランチボックスに寿司を入れると、黒い食べものが入っていると友だちに何か言われるから入れないでと言われていたのが、人気で取られるから多めに入れてほしいとなったんですよ」と喜ぶ寿麻さん。またベジタリアン、ビーガン寿司が注目されて、豆腐寿司やブラウンライス寿司、キヌア寿司も人気があるのだそうだ。
次のチャレンジへ
ビジネスを売ることになったのは、夫とともに寿麻さんの日本の両親の老後の世話をするためだが、「寿司キャラバンは、日本の寿司の味を伝えたいと思う方に引き継いでもらいたい」と寿麻さんは語る。
「自分で作ったビジネスは潰すのも成功するのも自分次第と思い、チャレンジのつもりでやってきましたし、いろんなことにぶち当たり、勉強にもなりました。10年続けてきたスマ寿司を手放すのは心残りもありますが、新しいオーナーさんによって、この寿司キャラバンビジネスが一層発展してくれることを願っています」
伊藤寿麻 さん
1993年にスキーとテニスのインストラクターの仕事に憧れてワーキングホリデーで渡来。9年前にネイピアからキャラバンを購入後、クイーンズタウンで初の寿司キャラバンビジネスを始める。10年目の節目にビジネスを売ると決意し、4月に行われる最後のイベントに向けて奮闘中。ニュージーランド在住28年目。
【Ph】027-247-8744
【Web】www.facebook.com/SumasSushi
4月までにビジネスを購入いただいた方へ、
運営に関して相談やアドバイス可能です。
経験のない方でもフルトレーニング致します!
お寿司ビジネス購入のお問い合わせはこちら!sumasushi@ymail.com
取材・文 GekkanNZ編集部