2022年7月号掲載
Q. ワーホリでニュージーランド生活をスタートするのに、フラットか賃貸物件を探しています。でも大家さんの意向で、急に追い出されることもあると聞いています。法律上、借主の立場は弱いものなのでしょうか?(前編)
ニュージーランドの不動産価格は高騰値の記録が続き、それに影響され、賃貸をする人口がかつてないほど増えました。そこで、政府は現在の賃貸の特性などを考慮し、テナント(借主)側に適度な保護を与える法律に改正しました。政府は住宅賃貸法(Residential Tenancy Act 1986)の見直しを行い、近年の賃貸状況を反映させた住宅賃貸改正法(Residential Tenancy Amendment Act 2020)が執行されています。
初めにテナントとフラットメイトの違いについて留意しておきます。テナントは大家(ランドロード)と正式に賃貸契約(Tenancy Agreement)を交わした人で、住宅賃貸法の対象になります。フラットメイトは、大家を介さず(大家と同居の場合もありますが)、既に住んでいるテナントと賃貸契約をした人を指します*¹。
改正法以前の法律では、「No Cause Termination」という、ある一定の条件下でNotice(通知)を出せば、大家は理由なしに賃貸契約を解除できましたが、改正法ではそれができなくなりました。新たに設けられたルールは主に下記の4点です。
- 大家または大家の家族が、物件に住む場合(63日前までに通知)
- 物件売却を予定している場合(90日前までに通知)
- 5日以上の賃料延滞を90日以内に3回行い、3回ともテナントへ通知している場合、Tenancy Tribunal*²に解約申請が可能
- 反社会的行動を90日以内に3回行い、3回ともテナントへ通知している場合、Tenancy Tribunalに解約申請が可能
賃貸契約(Tenancy Agreement)の違反についても少しだけ触れます。賃貸契約には、家を使うに当たってのテナントの責任が記載されています。例えば家をきれいに使う責任です。部屋が汚い場合、大家は部屋をきれいにするよう指示することが可能です。テナントがこの指示を無視して改善を図らなかった場合、大家はTenancy Tribunalに賃貸契約解除を申請できます。ほかにも、部屋を意図的に損傷させない、ごみを部屋に溜めないなどの責任があります。賃貸契約違反も賃貸契約解除の理由になりますのでご注意ください。
*¹フラットメイトについては2019年1月号掲載の当コラム第10回をご参照ください。
*²主に大家と借主の間で発生した問題を解決する裁判所
弁護士
Junichi Nishimura
西村純一ローズバンク法律事務所代表弁護士。オークランド大学法学部を卒業し、ニュージーランドで初の日本人弁護士となる。
Rosebank Law Barrister & Solicitor
【所】Level 1, 527B Rosebank Rd., Avondale, Auckland
【Ph】09-820-0154
【営】9:00~17:00【休】土・日曜
【Web】www.rosebanklaw.co.nz
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