2022年8月号掲載
福岡・宗像サニックスブルースで活躍した名富朗さんがヘッドコーチを務める7人制ラグビーの高校生チームNew Zealand Asian Barbarians。今年1月に行われたセブンズの国際高校大会では初出場にして準優勝という好成績を収め、話題をさらった。本誌では今号から2回に分けて躍進する同チームをリポート。第1回は名富さんにチーム発足の経緯や大会での手ごたえについて話を伺った。
アジア系高校生の成長の場に
ニュージーランド・アジアンバーバリアンズ(以下、NZAB)は、アジアにルーツを持つ選手が多く所属する、7人制ラグビー(セブンズ)の高校生チームです。セブンズの高校トッププレーヤーが集まる国際大会「ワールドスクールセブンズ」に出場するため、2021年に結成しました。
チームの発足は、長年フィジーチームのマネージャーを務めたブレッド・リーヴァ―と僕の2人で大会運営部に掛け合い、実現したものです。その目的は、ニュージーランドに住む日本人やアジア系の高校生たちに高いレベルのラグビーを体験してもらうこと。本場のラグビーを学ぼうとニュージーランドに短期・長期留学をする日本人高校生はたくさんいます。しかし、国の代表に選ばれるようなプレーヤーと合宿したり、同じフィールドで戦ったりする機会はそうそうありません。ワールドスクールセブンズは18歳以下の7人制大会としては世界一といえるレベルで、将来オールブラックスやスーパーラグビーでの活躍を期待される選手が多数参加しています。そうした環境でプレーすれば成長につながるし、代えがたい思い出が作れるでしょう。
ニュージーランド人選手にとっても同年代の日本人やアジア系を知るよいきっかけになると考えました。
初の大会で2位に
NZABの選手はオークランド、ハミルトン、ヘイスティングス、パーマストン・ノース、ウェリントン、クライストチャーチと、ニュージーランド全国から集めました。チーム構成はアジア系とそれ以外が半分ずつ。アジア系に限定すると小柄な体格の子が多くてポジションが被りますし、今後も連続して出場できるよう、ほかのチームと互角に戦える選手が必要だったためです。
アジア系以外の選手はニュージーランドの高校代表や18歳以下のスーパーラグビーに選出された経験を持つ実力派揃い。それでもほかのチームの選考に漏れた子たちだったので、「この大会で自分の力を見せてやる」という熱い意気込みを感じました。
大会前には4日間の合宿を実施。それ以前も選手同士をグループチャットでつないで練習メニューな
ども送っていましたが、全員が直接顔を合わせたのは合宿が初めてです。初日は正直不安でしたが、2日目からどんどんよくなりました。僕とはサニックス時代の同僚で、以前女子セブンズ日本代表ヘッドコーチをしていたハレ・マキリさんがアシスタントコーチについてくれた影響も大きかったと思います。
合宿ではトレーニングと練習試合のほか、食事やプール、ビーチでのリカバリーなどを通して選手同士の絆を深めました。合宿中にアジア系は自分たちのルーツのプライドを意識し、アジア系以外はこのチームの意味を理解してくれたのが嬉しかったですね。結果、準優勝という好結果を残すことができました。
日本人選手による特別なトライ
大会初日の最終戦では強豪チームのニュージーランド・コンドアズを相手に、日本人選手の井上柊くんがトライを取りました。彼は神奈川県出身で、オークランドのマウントアルバート高校に留学中。スピードのある選手で、それを活かしたトライの瞬間は感無量でしたね。ほかの人からすれば単なる1トライかもしれませんが、日本人が決めたトライというのは僕には特別な意味があります。ほかの日本人やアジア系の選手へも勇気を与えたでしょう。
ワールドスクールセブンズは年々レベルが上がっているだけに注目度も高く、衛星放送のスカイスポーツでも放映されます。世界の人々に井上くんのトライを見てもらい、映像で残せたのは、NZABにとっても大きな一歩となりました。
将来有望な日本人選手
井上くん以外にも将来有望といえる日本人選手はいます。例えば現在ウエストレイク高校2年の加藤大牙くんはまだ体は大きくないものの、運動能力が非常に高いです。低いタックルもできるし、いずれ司令塔になり得る選手だと思います。
1月の大会時点では15歳で、16歳以上という出場資格に届かず育成選手として参加した岸本類くんも攻撃の起点になる力の持ち主です。今はセント・ピーターズ高校1年で、すでに同校の1軍入りを果たし、5番や10番といった重要なポジションについています。今年12月に行われるワールドスクールセブンズでは彼らのプレーにもぜひ注目してください。
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名富朗(なとみ あきら)ヘッドコーチ
【Ph】027-560-1846
【Email】aki10nato26@gmail.com
【FB】NZAsianBarbariansRugbySevens
Text: Miko Grooby