7人制の国際高校大会ワールドスクールセブンズ(WSS)が2022年12月17・18日に開催された。福岡・宗像サニックスブルースで活躍した名富朗さんが率いるNew Zealand Asian Barbarians(略称NZAB、また大会での出場ニックネームASIAN DRAGON 7’s)と、日本からは女子日本代表U18セブンズ・デベロップメント・スコッドのメンバーが参加し、ASIAN DRAGON 7’sはベスト4、女子日本代表は優勝という結果に。試合の様子など名富さんにお話を伺った。
高まる日本のプレゼンス
大会初日の17日、NZAB、大会出場名ASIAN DRAGON 7’sは、プール戦初戦でNZ Warriorsを相手に、立ち上がりがぎこちなかったものの押されながらも逃げ切って14対12で試合を制した。2戦目では体制を立て直し、Australian Cavaliersに34対5で勝利しベスト16トーナメントへ進んだ。トーナメントに入った3戦目ではNZ Fijian Schoolとの対戦で、両チームの力が拮抗していたものの、日本から合流したキム・テソン選手の大胆で鋭く低いタックルが相手にインパクトを与え、ASIAN DRAGON 7’sが14対12で勝利をおさめてベスト8へコマを進めたところで1日目を終了。
そして大会2日目初戦、強豪オーストラリア国代表とあたることに。試合開始直後にASIAN DRAGON 7’sがジャック選手のトライで先制。これで出鼻を挫いたが、すかさずオーストラリア代表も点を返し、逆転される。そのまま僅差で前半を終え、逆転出来ないまま後半終盤へ。ボールを奪って必死にパスを繋ぎ、右サイドで受け取ったカイア選手が独走しトライを決め、20対17の土壇場逆転勝利。セブンズでは最後まで諦めないことが大事だと思わせる試合となった。これでベスト4へと進み、サモアとの戦いへ。セミファイナル前半、10対5でリードした形で折り返したものの、後半で相手優勢の波が来てしまう。チームの集中力やスタミナが切れ、相手を止めることができず10対27で逆転負けの結果となった。
一方、パスなど基礎の完成度や戦術の習熟度が高い女子日本代表は初日、危なげないプレーでNIUE FITI PUNAに47対0で勝利し、強豪NZ Maoriとは5対5で引き分けに。Rugby Vaultとは24対12で勝利し初日を終えた。2日目初戦はニュージーランド国代表との試合で、かなりの強豪だが26対12で勝利、さらにNZ Cavaliersとの2戦目では26対0で制した。いよいよ女子のオーストラリア国代表との決勝戦。まず前半は優位で折り返したものの、後半、相手に得点の波が来る。しかし落ち着いて自分たちのペースを取り戻し、Japanコールの響く中、逃げ切って24対19で優勝、会場は大いに湧いた。表彰式では金メダル授与に加え、大橋聖香選手、島本星凛選手がベストセブンにも選出された。
国際的な試合や経験の価値
今大会の女子日本代表の谷山三菜子選手はしっかりと役割をこなし存在感を発揮していたが、ニュージーランドへ3ヶ月留学経験があるとのことで、表彰式後にお話を伺った。「留学中に現地の友達がたくさん出来てすごくよかったです。今日来てくれたひとたちに挨拶をしてきたところです」と顔をほころばせた。確かに試合中に「GO! Minako!」という声が響き渡っていて、アウェイ感を払拭していた印象がある。
今大会の日本女子代表の完成度や安定した戦いぶりはBlack Fernsを思わせるものがあり、ぜひこのままフィジカル面の強化に加え、国際試合の場数を踏み、成長した姿を見せてほしいと思わせた。
ASIAN DRAGON 7’sでは今大会、日本から5名、リー・チス選手、キム・テソン選手、日本ラグビー協会派遣の瓜生丈道選手、福田正武選手、吉田雅選手が合流しており、それぞれ合宿中の日常英会話には苦戦しつつも、「チームとの練習は楽しい、試合では大丈夫です」と新しい環境に戸惑いつつも楽しんでいる様子が伺えた。合流してすぐ「日本での相手に比べ、体の大きさは全然違う」という感想があり、これは先日の女子ラグビーW杯の代表選手たちも言及していた。彼ら5人は高い基礎力があり、高校生のうちに世界レベルに触れられたのは今後のラグビーキャリアの糧になりそうだ。
大会を振り返って
ASIAN DRAGON 7’sのヘッドコーチである名富さんに、大会を振り返って得られたこと、また今後の課題についてお話を伺った。
「今大会は日本から派遣選手を交えたチーム編成で、それは他のチームには無い試みでしたが、派遣選手たちもNZ国内選手もお互いに協力し合い、国境も開いて強豪チームが増えた今回、ベスト4という結果につながったと思います。大会を振り返り、もっとアジア色を出していけたらと思いながらも準備期間が1週間足らずという中で、次につながるような勝利をチームが経験できたことは何よりでした。自分たちを誇りに思ってほしいと思います」
違う国でプレーする選手たちが一つのチームに招集され、勝利した経験をぜひ今後に活かしてもらいたい。
取材・写真:GekkanNZ