Good Kiwi Tucker! vol.201 この夏の旅!? あの街、この街で出会うパンたち!

Good Kiwi Tucker! GOURMET

オークランドからクライストチャーチまで車で下るという、ちょっとめずらしい旅行をした。北島と南島の間のフェリーを除いては全行程がドライブというなかなかのハードさ。それでもまだ、要所要所で観光を楽しみながらの旅行だったらよかったが、今回は2泊3日のタイムリミットがあったから、結局は朝から晩まで走り通しの急ぎ足…それこそ、夕食後にも暗い夜道をもうひと走り、という感じだったので、終わってみれば「途中のあの場所はよかったわぁ」というような思い出がほとんど残らなかった。タイミングもいまいちだったのか、絶景のはずのタラナキ山は曇り空で見えず、タウポ湖は日が暮れて真っ暗!観光が目的じゃなかったけれど、もうちょっと景色はゆっくり見るべきだった。

しかし、そんなすっ飛ばした旅行にも、ちゃんと楽しみはあった。それはもちろん食べる物。ただし今回は一日でどこまで進めるかわからず、うかうか食事に時間もかけられない。というわけで、行く先々でよさげなベーカリーだけは探そう!と決めた。え〜、この国でパン屋さんなんて…と思います?でも、早起きして朝の町でパンを買ってみたら”どこにでもありそうな”お店と”ここにしかなさそうな”お店、どちらもいいところを見つけてしまったのだ。

まず、どんな小さな町にもあるのが、一昔前から続いていそうな、ちょっと懐かしのベーカリー。大した内装でもない(ここがポイント)お店の中には、やっぱり飾り気のない、だけどやたらと具沢山なサンドイッチや、いかにも甘そうな菓子パンがずらり。いや〜うちの近所にもありそう…だが初めて入るお店だったら、わたしがあえて買ってみるのはこの国らしいクリーム・バンだ。

いい街ですねぇ…
イラスト リカ

クリームパンじゃないですよ、ホットドッグ用みたいな長いパンに、ホイップクリームがたっぷりしぼってあって、ラズベリージャムの赤い色がテンテンとのっている…このクリーム・バンこそ、地元でもい
ろんなお店で買っているから、ひと口かじればちがいがわかるはず!? ハイ、本当にそうでした。ほとんど知られていない田舎町で、やわらかパンにフワッフワのクリーム、両方の食感が絶妙〜なクリーム・バンとの出会い、ありました!こんなお店がひょっこりあるなんて、いい街だったなぁ(注・急いでいたので街そのものの印象はほとんどなし)。

また、首都ウェリントンではフランス人の営むブーランジェリー(パン屋さんもフランス語で言うとシャ
レておる)を見つけた。香ばしいバゲットにパン・オ・ショコラ、繊細でキラキラのケーキ!移民国家の良きところは、外国の本場の味がこれまたひょっこり楽しめるところ。
もっと南に下って、旅行最終日の朝にブレナムでもパン屋さんを探したら、朝っぱらから人で混みまくるお店があった。いい匂いが外まで漂ってきて、狭いところにめずらしいパンがいっぱい…と思ったら、そこはオランダの職人さんのお店だった。う〜ん、どこもいい街じゃないか!(くどいようだが、それぞれの街そのものはサラっとしか見てないという…)ああ、チャンスがあったらまた長い旅に行きたい。でも…パンを探す旅だったら自分の住んでいる街の中でもいい旅ができそう。レトロなニュージーランド旅行も、意外な世界旅行も、けっこう身近ってことじゃない?(いや、だからちゃんと景色を見て楽しむ旅に出なさいよね、次こそは!)

*Tuckerとはキーウィ独特の言葉で、「食べ物」というよりは「お腹に詰め込むもの」という意味

マツザキ リカ

ニュージーランド在住26年。クライストチャーチを拠点に暮らし、心も体も豊かにするキーウィフードの探求に余念がない。おいしいものも不思議なものも、いただきます!

2023年1月号掲載

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