FIFAクラブW杯試合結果&遠征で得たもの
ニュージーランドで長く活躍しているAuckland City FCは、2023年2月開催のFIFAクラブW杯2022にオセアニア王者として出場。チームはスペインを経由して大会直前に開催地モロッコに到着、大会に臨んだ。得たものが多かった今回の遠征について、チームメンバーとして参加した岩田卓也さんにお話を伺った。
FIFAクラブW杯結果
開催地モロッコで準備を整え、Auckland City FC(以下AC)が臨んだ初戦の相手はエジプトのチーム、アル・アハリ。実は過去実績だと負けたこともあり手強い相手だ。しかしACも、岩田さんが出場した2014年で大会3位につけている。お互いに油断はできないが勝ちたい相手といえる。
まず試合開始序盤はアル・アハリ優勢で始まり、何度かヒヤッとする場面もあったものの、徐々に競り合いの場を相手ゴール側へと押し返し、ACもコーナーキックなどチャンスを作り始める。お互いに決められず、両者カウンターを仕掛けてフィールドを駆け回る厳しい戦いへ。前半終了間際、アディショナルタイムは2分の掲示。この間にアル・アハリが攻め込む状況になり「ここを守り切って後半へ」のムードも感じられたが、守勢にまわった残り1分のところで決められてしまう。
1点ビハインドで始まった後半。気持ちを切り替えて余裕が出た相手の隙をついていけるか、それとも相手が波に乗ってしまうか大事な局面だが、攻勢に出ていくものの相手も攻め込み、後半14分前後でACのDFをアル・アハリのFWがかわし、GKと一対一の状況になってしまう。そこで決められてしまい、点差は2点に。しかしまだ試合は残り30分以上、ここで返していけるかという正念場に。立て続けにメンバー交代をし、ムードを変えて立て直しを図るAC。対してアル・アハリも交代を始め押さえ込みにかかる。投入されてすぐにAC若手選手がシュートを打って狙っていく。選手たちもこの国際舞台でプレーヤー個人としての実績を作りたいところだ。
さらに後半終了間際、アル・アハリがダメ押しの3点目を決めてしまう。ここでアディショナルタイムは4分。これ以上の点差は避けたいAC、自陣のゴール前で相手FWを止めようとして反則を取られてしまう。審議が長引き、どんどん時間が過ぎていく中、レッドカードを出され、ペナルティエリアでフリーキックのピンチを守ったところで試合終了。ボール・ポゼッションはアル・アハリ52%、AC 38%(中立10 %)。
結果としては残念であったが、今後の課題も見えたのではないだろうか?これから日本人プレーヤーがニュージーランドに増えていくなら、ぜひ日本の精度の高いベーススキルや、ボールをある程度追いかけていくサッカースタイルも取り入れてみてほしい。
プレーで自己表現できる環境
日本人ではFIFAクラブW杯最多出場の岩田さんに今回の遠征を振り返っていただいた。
「今回、チームとしては低い位置でラインを作り、しっかり守って攻撃を仕掛ける戦術でしたがなかなか攻撃に厚みをかけられず攻めきれませんでした。また、チームが苦境に立つ中、後半に交代で入っていった若手選手がシュートを打っていきましたが、こういった大舞台で二十歳ほどの選手が自分からああいったプレーで活躍ができるというのはすごいと思います。年上の選手がいる中で遠慮せずにプレーで自己表現をしていくのは日本では難しい面もあると感じますが、個人としてどんどん自己表現のプレーができるのはニュージーランドならではですね。ピッチ外でも同じようなムードがあると言えます」
今回の遠征では岩田さんがインスタグラムで遠征の様子を発信していたが、確かにチームメイトたちと穏やかな時間を過ごしつつ試合に備えている雰囲気が伺えた。
国際舞台への道がある
「例えばアル・アハリなど他のチームはプロチームとして活動しており、所属する選手たちはサッカーに集中する生活を送っている一方で、僕たちはセミ・プロフェッショナルとして普段は別の仕事もしながらサッカーをしています。チームがじっくりサッカーに集中することが出来たこの旅は本当に貴重な時間だったと思います。ヨーロッパ屈指の強豪FCバルセロナと練習試合をしたり、クラブの設備やヨーロッパのサッカーを見学し、アル・アハリのようなプロチームと国際舞台で対戦できた。いろいろ見た上で、チームのプロ化は選手たちやニュージーランドのサッカーレベルを上げることに有利であるだろうと改めて感じました」
遠征では選手たちが手厚くケアされている様子も伺え、FIFAからの援助があったという。
「オセアニア代表となってFIFAクラブW杯に出場するにあたり、旅程や宿泊施設などはFIFAから援助があったと思います。長旅ではありましたが快適で、良いコンディションで試合に臨むことができました」
確かに写真ではラグジュアリーな旅とも言える待遇で、選手への気遣いが感じられた。
「チームとして勝ち進むことができなかったのは残念ですが、こういった大舞台で良いプレーをすれば注目してもらえる大きなチャンスです。現に今大会を経て参加チームの中には移籍を決める出場選手たちもいます」
オセアニア代表となって国際舞台でプレーできる道もあるニュージーランド。ここでプレーするのは選手個人としても価値があるのではないだろうか。
岩田 卓也
Takuya Iwata
ポジション:DF。2006年に岐阜FCに入団。オーストラリアに渡り2010年からエッジヒル・ユナイテッドFC、クイーンズランド・ブルズに加入後、ニュージーランドに移住し2012〜2019年オークランド・シティFC在籍。2020年からウェスタン・スプリングスAFC、日本に戻り、はやぶさイレブン、福井ユナイテッドFCを経て、2022年から再びオークランド・シティFCに加入。
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2023年3月号掲載
Photo: 岩田さんインスタグラムより ©︎Auckland City FC Text: GekkanNZ