いかに食いしん坊のわたしでも、今日は晩ごはん作るのめんどくさーい！と思う気持ちが抑えられない時がある。疲れてメニューが浮かばないとか、食べたいものがあったとしても、買い物に行かなきゃとか、調理の時間が…と考えるだけでおっくうな日。思い切ってもう今夜は外食かテイクアウェイね！といっても、今度はお金がかかっちゃうし、栄養のバランスもアレだから罪悪感がぬぐえなかったり…。じゃあどうすれば⁉
最近、そういう話題になった時に“ミールキット”を使っているという人がいて、一瞬「おおっ…」と思ったのである。ミールキットとは、一食分のディナーメニューの食材が人数分だけキッチリ入ったお料理セットのことだ。週のうちに作りたい回数や家族の人数に合わせて選べて、手軽にパパッとできるメニューがいろいろ。おまけに、育ち盛りの子どものいる家庭向けから、ダイエットしている人向けの低カロリー食まで、栄養面の調整もできるのだとか。当然ながらセットとして宅配される（あるいはスーパーなどでも入り口付近に袋入りで売られている）から、買い物や食費で一喜一憂するわずらわしさもない…それは、いかにも便利そうだけど…。
でも、うちでこのスタイルはだめかも。だってここはニュージーランドなのだから、ゴハンとミソ汁でもいけそうなおかずはなさそうだし、もしも味付けが口に合わなかったら、食べてる間もビミョーな空気が流れそう。そんな感じでやや腰がひけていたところ、運よくキットが数回分お試しできるチャンスがあったのである。それはやります！作ってみます！
キットの箱を開けてみると、まずはメニューの厚紙がてっぺんに一枚。今日のディナーは、地中海風チキンのフライパンソテーと、ズッキーニとニンジンのオーブン焼き（これが主食のチップス代わりだという)、そしてコールスローサラダである。しっかり保冷された袋の中からは、よくもこんなに健気なサイズのキュウリやニンジンがあるものだわ…と思うようなぴったり２人前のお野菜。それと、切る必要すらない2枚のお肉のパックが出てきた。なるほどこれを、一緒に付いてきた地中海味とやらのタレ？にもみこんで焼くのかぁ。サラダも、袋から出してドレッシングで和えれば完成⁉ なんならオーブン焼きの野菜もフライパンでチャッチャッ方式にハショれば（そこはなんか日本人よねー)、聞きしに勝るカンタンさじゃないか。たしかにゴハンのおかずとはいかないけれど、野菜がてんこ盛りでこれだけのものをふつうに買ったらけっこうな金額だし、あえて炭水化物を摂らないところもカフェメニューみたいで新鮮なのだ。味付けも、いわばたった一袋のタレだというのに、甘辛かげんやスパイスのきき具合が実にいい…。しかし、そんなふうに思い込んでいるのはわたしだけか⁉ と家人のほうを見てみたら「地中海かどうかはわかんないけど、わりとイケる！アリだね」とか言って、パクパク食べてる！
おおミールキット、おそるべし。だいたい誰もが好きなところに味を合わせてきているとは。それに、これだとお料理がイヤな人とお料理がきちんとしたい人、どっちにとっても助かるわけだ。固定の料金だと、野菜などが高くなる冬にもいいかも。あと、あの地中海味って自分じゃ再現できない。だったらもう一度頼むしかなさそう（まさか、それが理由〜⁉）
＊Tuckerとはキーウィ独特の言葉で、「食べ物」というよりは「お腹に詰め込むもの」という意味
マツザキ リカ
ニュージーランド在住26年。クライストチャーチを拠点に暮らし、心も体も豊かにするキーウィフードの探求に余念がない。おいしいものも不思議なものも、いただきます！
2023年5月号掲載