【トレッキングガイド】ワーキングホリデーでニュージーランドに。日本とは逆の季節を利用し、ガイドとして二拠点生活を続けている。 – Missyさん

トレッキングガイド/【テ・アナウ】小川美佐子(Missy)さん BUSINESS

ふとしたキッカケから夫婦で行こうと、ワーキングホリデーでニュージーランドに渡航したMissyさん。夫の明人さんとともに、南島南部の町テ・アナウを拠点にニュージーランド南島でのトレッキングガイドとして働きつつ、ニュージーランドのトレッキングオフシーズンには日本での添乗業務に携わるという、ニュージーランドと日本の二拠点生活をしているそう。常に初心を忘れず、ニュージーランドの大自然の持つ魅力をガイドし続けているMissyさんに、トレッキングガイドの仕事の魅力や必要な経験、2か国を行き来する生活のコツについてお話を伺った。

Q. ニュージーランドへ来たきっかけは何ですか?

30年ほど前、当時交際中だった夫からワーキングホリデーでニュージーランドの山を歩きたいと言われました。その時にふと「お前も一緒に行くか」とも言われて、「それも面白いかな」と思ったのがきっかけです。(夫曰く、「そう言ってしまったのは”人生最大の失敗”だった」とのこと。笑)諸々を考え、まずは結婚して「夫婦で」渡航することにしました。でも今では、交際中のままでも変わらなかったかなと思っています。

夫・明人さんと
©Tutoko Outdoor Guides Ltd. 写真左がMissyさん、右が夫の明人さん

Q. ニュージーランドに来る前はどんなお仕事をされていましたか?

日本で福祉系大学を卒業して、学童保育所の指導員になりました。仕事は充実していましたが、当時この仕事はまだ無認可運営の雇用条件だったのと自分の甘えを考え、組織の中での正規雇用で働こうと病院事務に転職しました。中規模で救急外来もある病院でしたので、事務職以外にも様々な業務に携わり、とてもやりがいのある職場でした。ニュージーランドに行くために退職しましたけれども、最後は後ろ髪を引かれる想いで日本から出国する2日前まで働いていました。

Q. ニュージーランドでトレッキングガイド会社を経営されているとのことですが、どのようなお仕事か教えてください。

原生林、清流、滝、湿原、お花畑、山上湖、氷河、U字谷といった大自然の中での山歩きや観光を日本人のお客さまにガイドしています。弊社Tutoko Outdoor Guides Limitedは、ニュージーランド最大のフィヨルドランド国立公園に隣接した街、テ・アナウにあり、南島の7つの国立公園と自然保護地区内でガイドすることができる許可権を所持しています。営業期間は毎年ハイシーズンの10月下旬から4月下旬までで、日帰りハイキングから数日間のツアーまで案内しています(お問い合わせはサイトやSNSから)。

大自然の中での山歩きや観光を日本人のお客さまにガイドしています
©Tutoko Outdoor Guides Ltd. マウントクックにて

Q. 起業に踏み切ったきっかけはなんですか?

移住当初、私はクィーンズタウンでガイド、夫は180キロ離れたテ・アナウでトレッキングガイドの仕事に就いたことから、数年間は別居生活で働いていました。その頃、日本人観光客が増加して大人数グループツアーが続き、ガイドの仕事をしながら「少人数で楽しめるガイドツアーができたら」と思っていました。そんな時に夫から「法律と許可権を遵守して安全で楽しめるガイド会社を設立したい」という話を聞き、一緒に起業するに至りました。

Q. トレッキングガイドとして働くために必要な資格、あった方がいい経験などがあれば教えてください。

ハイキングやトレッキングは「野外活動」ですから、ファーストエイド資格は必須です。また、移動のためのパッセンジャーサービスライセンス(二種免許)、旅行関係の資格もあるといいと思います。もちろん山歩きの経験は必要ですけれども、これは一朝一夕には身につくものではないので、地道な積み重ねが大切です。初めは熟練者に同行したり、ガイドツアーに参加したりするといいでしょう。他にもスキーやカヌーの経験、自身での旅行経験など、様々な経験が複合的に役に立ちます。私は病院勤務での経験が役に立っていると感じることが多々あります(急を要するトラブルや出来事が起きてもすぐに動ける、冷静に観察して対応できる)。

Q. 1年の約半分をニュージーランドで、残りを日本で過ごされているそうですね。多くの人が憧れる生活スタイルですが、なぜそのようなことが可能なのでしょうか?

ニュージーランドと日本は季節がトレッキングのハイシーズンも逆になります。これを利用し、ニュージーランドのオフシーズン(日本のハイシーズン)には日本で仕事をしています。初め、日本では夫は実家在住で国内の山ガイド、私は実家近くでリゾートバイトしていました。その後、旅行関係者から声を掛けていただいて、それぞれ海外添乗資格を取得して添乗業務を始めました。これに伴い、実家家族と話し合い、実家拠点で仕事をしていくルール作りをしました。2か国を行き来する生活を始めて30年以上になり、改めて可能にしている理由を考えますと、双方の家族や周りの協力があって、それぞれの国での仕事があること、失敗することで知恵がついてきた、などだと思います。

2か国を行き来する生活で一番大変なのは、日本に行く前です。毎年4月はシーズン終了の雑務と車輌整備を並行して行いながら、1か月かけてニュージーランドの庭と家を大掃除し、冷蔵庫も空にし、電源を切り、水栓を締めて家を出ます。そしてニュージーランドと日本を行き来する機内で頭のモードを切り替えています。

Q. 「ニュージーランドで働く」ならではの楽しさや魅力、やりがいについて教えてください。

ニュージーランドの自然や景色の魅力をお客さまに伝え、お客さまが楽しんでいただいたことにやりがいを感じます。ハイキングやトレッキングでガイドをしながら景色を見ていると、毎回、素晴らしい場所を案内していることを実感します。そしてお客さまが心からご旅行を楽しんでいる様子を見るとやっていてよかったなと思います。
海外添乗業務で世界各国を訪れても、ニュージーランドに戻ってきて、景色を見ると、あぁ帰ってきたなぁとホッとします。また、ニュージーランドに来て気づいたのは、雲の形がたくさんあることです。クィーンズタウンで観光ガイドをしていた時から、今も変わらずバスや車輌の窓から見える雲のある景色を楽しんでいます。

©Tutoko Outdoor Guides Ltd. 添乗先のイタリア・ドロミテにて

Q. ニュージーランドと日本での働き方の違いなどはありますか?

個人的には、日本とニュージーランドでの働き方には特別な違いはないように思います。どちらの国でも、与えられた仕事は準備をしっかりし、責任を持って全うしますし、もしミスや失敗をしたら素直に受け入れて、なぜそうなったのかを冷静に考え、次は起こさないよう考察して(と言いつつ再度しておりますが・苦笑)、さらに良くなるようにする。これらを積み重ねて経験値を上げ、まわりの信用を得て、次の仕事に繋げる、これの繰り返しです。

Q. オフの日や仕事終わりの過ごし方はどのような感じですか?

仕事がアウトドアだから休日も活発に、ではなく、家にいてYoutubeを見たり、我が家に来るお向かいの猫ちゃんを構ったりしています。弊社は家にオフィスがあるため、シーズン中は、休日でも仕事のことを考えてしまい、なかなか気持ちがゆったりできないですね。

Q. 最後に、これからニュージーランドでトレッキングガイドをやりたいと考えている方に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

ハイキングやトレッキングガイドというと「かっこいい仕事」のイメージがあると思います。しかし実際には、どんな天気の中でも重い荷物を背負い、常に安全管理に注視して、非常の際には的確に対処することが求められます。お客さまから信頼されて楽しんでいただくように案内することは、肉体的にも精神的にも大変な仕事です。そのためには健全な肉体と強い精神力が必要ですし、多方面の知識を得るべく貪欲に勉強を続けることも必要です。我こそはと思う方、ぜひ頑張って、素晴らしいガイドさんになってください。

重たい荷物を背負い、常に安全管理に注視して、お客様をご案内
©Tutoko Outdoor Guides Ltd. 川渡渉アシスト中

小川美佐子(Missy)さん


トレッキングガイド
小川美佐子(Missy)さん


長野県出身。1994年、最初の結婚記念日に、夫・明人さんとワーキングホリデーでニュージーランドに渡航。南島の観光地、クィーンズタウンでガイドを始め、テ・アナウでトレッキングガイドの職を得た明人さんと別居生活になる。翌年、永住権取得後はニュージーランドと日本を行き来する生活を開始。2000年、南島南部を中心としたハイキング・トレッキングガイドサービスの会社を設立。テ・アナウに居を構え、2001年に事業をスタート。何回もガイドした場所でも常に初心を忘れず、新鮮さを持ってガイドしている。
Web: tutokoguides.co.nz
X: @tutokoguides_nz

取材・編集 GekkanNZ

この記事の内容は個人の過去の体験談です。必要な場合は、最新の情報をご確認ください。

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