【美容師】国際結婚&子育てを経て再出発。日本の経験を活かし海外の美容院でキャリアを築く – ひっちょんさん

【美容師】国際結婚&子育てを経て再出発。日本の経験を活かし海外の美容院でキャリアを築く – ひっちょんさん BUSINESS

日本で美容師をしていたひっちょんさんは、日本で知り合ったニュージーランド人男性との結婚を機にオークランドに移住した。子どもの手が離れるころに美容師として再出発し、現在は高級ヘアサロンで活躍している。ニュージーランドの美容業界で豊富な経験を持つひっちょんさんに、就職活動の秘訣や美容師に必要な能力、ニュージーランドの美容院の強みについてお話を伺った。

Q. ニュージーランドへ来たきっかけは何ですか?

日本に住んでいたニュージーランド人男性と知り合い、彼との結婚を機にニュージーランドに移住しました。1995年9月に入国して、1996年にオークランドで結婚しました。

Q. ニュージーランドに来る前はどんなお仕事をされていましたか?

日本では12~13年ほど美容師をしていました。学生時代からデザインやアート系の勉強をしていて、なんとなく将来は美容師がいいんじゃないかなぁと思い描いていました。また、子供の頃から手先が器用で、共働きの両親に代わり、小学生の私が胡瓜のお漬物や酢豚を作って、母を驚かせたことがあります。ちなみに今でも時間があると料理は楽しんで進んで作っています。

Q. ニュージーランドでの美容師の主な仕事内容について教えてください。

シャンプー、カット、カラー、セットなど、髪の毛のお手入れ全般の美容術を行うのはもちろん、飲み物の提供にも力を入れています。日本の美容院では、提供される場合はコーヒーや紅茶が一般的だと思いますが、ニュージーランドのヨーロッパ系美容院では、それに加えてビールやワインなどのアルコールも提供しています。私もこちらで長く働いているうちに、バリスタとまでは行きませんが、かなり美味しいフラットホワイトが作れるようになりました。

今働いている美容院は、少し高級な雰囲気でお値段も高いですが、それに見合うサービスを常に心がけています。日本人が海外の美容院に行くと、シャンプーが雑に感じたという話をよく聞きますが、うちの美容院はシャンプーも日本に負けていません。気持ち良くて寝てしまうお客様もいらっしゃるくらいです。こちらでは日本でよく見かける顔に被せるガーゼの様なものはありませんので、口をパカっと開けて寝てしまわれるお客様などは、寝ているのがわかってしまいます(笑)

美容院で提供される、本格的な美味しいフラットホワイト

Q. ニュージーランドで初めての美容師としての仕事はどのように探しましたか?

移住後に子どもが生まれて、しばらくは子育てに専念していました。しかし子ども達が幼稚園に行き始めた頃、無性に将来が心配になり、仕事を探すことにしました。働くならやはり美容師をしようと思い、いくつかの美容院にCVを送ったり電話をしたりしましたが、なかなかうまく行きませんでした。

そんな時に、子ども達の習い事で知り合った現地のお友達に相談してみたところ、彼女の行っている美容院を教えてくれたのです。スタイリッシュだし、外国人が多く働いているようなので私も働きやすいのではないか、と言われてその気になり、すぐに電話をしました。しかし折悪しくちょうどお店が忙しかったようで、受付の方に名前と電話番号だけを伝えただけで電話を切られてしまいました。ここで諦めたらダメだと思い、電話を切った後、コソッと覗きがてら、自分をアピールするためにお店にCVを置きに行きました。それが功を奏したのか、1週間ほど経った頃に、面接しましょうとの電話をもらうことができました。

当時の私は、しばらく美容業界から離れていたことと、まだ子どもが小さくてフルタイムでは働けないというハンデがあることを自覚していました。そこで、面接では「将来的にはフルタイムで働きたいこと」「腕には自信があること」をアピールしようと思いました。「まずはボランティアでもいいから仕事をさせてほしい、働きぶりを見て気に入ったら雇って下さい」と言ったら驚かれましたね。結局、面接の場で「いつから来られますか?」と聞かれ、採用が決定したので、天にも昇る気持ちでした。面接は10月の初めごろでしたが、ちょうどクリスマス前の繁忙期を見込んで美容師を増やしたい時期だったようで、タイミングもよかったのだと思います。そのオーナーとは今でも良いお付き合いをさせて頂いていますが、ボランティアで仕事をさせてくれと言ったのは後にも先にも私だけだと、今でも話題に上ります(笑)

Q. ニュージーランドで美容師として働くために必要な資格、あった方がいい経験などがあれば教えてください。

日本で美容師の免許を持っている人は、国家試験の合格証書を持って来るのがいいと思います。もし免許などがない場合は、美容院で働いていた証明書やオーナーのサインなどがあるといいです。私は、国家試験の合格証書と管理美容の免許、コンペティションでの証明書や写真など、こちらの美容院のオーナーに私のことをわかってもらうために必要と思われるものは何でも持って来ました。

美容師という仕事は、技術職であると同時にホスピタリティを持ってお客様に接するサービス業でもあるので、「聞き上手」であることが必要です。英語環境となると「聞き上手」も難しく、英語が苦手なせいで、分かってはいるけどどう返していいのかわからない時もあるんですよね。現在私が働いている美容院のオーナーは、技術的なことはもちろんですが、ホスト並みにホスピタリティが抜群で、お客様へのキスとハグの嵐、服装を褒めるなどのリップサービスを自然に行い、お客様のマダム達を喜ばせています。そんな彼に私もいつも勉強させられてます。

LENSKIオーナーご夫妻と

私の英語については、正直、移住から30年近く経つ今も決して流暢な英語とは言えませんが、お客様にいつも許してもらっていると思っています。とはいえ、やはり英語力が低いと低く評価されがちですし、お客様からの信頼を得るのにとても時間がかかります。なのである程度の英語力は必要だと思います。

Q. 美容院での仕事について、ニュージーランドならではの特長はありますか?

ニュージーランドでは、若い女性の多くは長い髪を好み、日本の様にショートボブにする方は余りいらっしゃいません。前髪はカーテンバングと言って、カーテンを左右に開けた様な感じの前髪がおでこから頬にかけてかかるようなスタイルが多いです。今年4月に日本に一時帰国したら、日本では若い女性の間で前髪をバーコードの様に下ろすスタイルが流行っていてビックリしました。そしてその前髪は風が吹いてもびくともしないので、一体どうやって固定しているのだろう、とまじまじと見てしまいました。専用の糊があるみたいですね。

ニュージーランドの美容院では、日本のようにシャンプー後に肩のマッサージはしません。その代わりに、お店によっては、シャンプー中に頭皮全体から首筋にかけてのマッサージをします。ヘッドスパみたいな感じです。

パーマも、ニュージーランドではあまり需要がありませんね。私の友達がニュージーランド人経営の美容院でパーマをかけてとんでもないことになってしまいました(笑)。パーマをかけたい時は日本人経営の美容院をお勧めします。 

逆にヘアカラーの技術は、ニュージーランドで覚えたと言っても過言ではありません。ニュージーランドでは白髪染めなどのリタッチだけでなく、日本に比べてフォイルワークがかなり多いんです。白髪をカモフラージュする為のちょっとだけのフォイル、沢山のフォイル、バリヤージュというテクニックのフォイルなど様々あります。ブロンドにする為のフォイルカラーがとても多いのも、日本との大きな違いです。

また、ニュージーランドでは「常連のお客様」が多く、その日の施術が終わると、帰り際に次回の予約をされるお客様が半数以上いらっしゃいます。6ヶ月分、一年分の予約をされる方も珍しくないんですよ。

Q. 逆にニュージーランドならではの大変なことや難しいと感じる部分はありますか?

20年以上ニュージーランドで美容師をやっていますが、今でもお客様の名前をフルネーム(苗字と名前)で覚えるのに苦労しています。自分の常連さんの名前は憶えているのですが、他のスタッフのお客様の名前は、英語だからというのもありますが、なかなか覚えられません。お客様も、SheとかHeのような代名詞ではなく、名前を呼ぶととても喜ばれるので、「お客様の名前を覚える」のを今年の目標に掲げて頑張っています。

初めに就職した美容院では、いじめにあったこともあります。大きなお店でスタッフがいつも23~25人はいたのですが、それだけ人数が多いと、陰口や軽い嫌味を耳にすることもあります。私も9年目に入った頃にスタッフの1人から陰険な嫌がらせをされました。直接止めてほしいと伝えたり、仲の良いスタッフに庇ってもらったりしたのですが、1年程我慢した後に耐え切れなくなり、次の職場を探すことにしました。いじめは「よくあること」とは言いませんが、残念ながら存在はしています。外国で働くとなると、外国人であるが故の英語のアクセントや、日本人特有の勤勉さ、人の好さなどが利用されることもあります。私は当時50歳で、ここを辞めたら他に雇ってくれるところがあるのだろうかと不安になり、すぐに辞める決断ができませんでしたが、辞めた後はすぐに2件目の美容院に就職でき、現在は3件目の美容院で働いています。何歳だろうと、ポジティブさをもってしっかり仕事をする人には次のチャンスがあると私は思います。

Q. オフの日や仕事終わりの過ごし方はどのような感じですか?

ニュージーランドの美容院の定休日は、ショッピングセンターなどにある美容院を除いて、基本的には日、月、祝日です。オフの日は、うちで飼っている大型犬のブラックラブラドールと一緒に公園やマリーナにウォーキングに行くのが、日課になっています。

お料理も好きなので、気が向くと台所に立って色々作りますが、変化球すぎて家族に不評になることもあります。お酒も好きなので、つまみ系は得意です。

Q. 最後に、これからニュージーランドで美容師をやりたいと考えている方に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

私は夫がニュージーランド人で、おそらくこの国で永住することになると思い、ヨーロッパ系の美容院で働くことにしましたが、将来的に帰国する予定の人は、帰国後の自分を想像して働く美容院を選べばいいと思います。ヘアカラーのようなニュージーランドの技術を習得するのを目標にするとか、英語をスキルアップして日本で活かすのもいいと思います。

応募するときは、電話やメールではなく、初めからお店にCVを持っていくといいかもしれません。オーナーに会えれば第一印象を見てもらうことができるし、自分もお店の雰囲気を知ることができます。

また、面接時にカットモデルやカラーモデルを連れて来るようにリクエストされることもあるので、あらかじめ友達などに頼んでおくといいですよ。日本でどんなに経験のある美容師でも、面接時点ではオーナーには分からないので、実際に働く前に技術力や仕事の様子を見たがるんです。
めでたく採用されてからも、初めは担当の顧客がいないことが多いので、仕事がシャンプーアシスタントから始まるというケースも少なくありません。私がそうでした。

日本の美容師はトータルでとても素晴らしいので、誇りをもって頑張ってください。


美容師/【Auckland】
Toogood久紗恵(ひっちょん)さん


美容師
Toogood久紗恵(ひっちょん)さん

福岡県出身。美容師歴30余年。1995年にニュージーランドに移住し、現在はオークランドの高級ヘアサロン「LENSKI」でスタイリストとして働く。LENSKIでの愛称は「ヒコ」。家族は、ホークスベイ出身の頑固者の夫、娘二人、猫2匹と黒ラブラドール。好きな言葉は「継続」。おっちょこちょいで涙もろく、お酒とお寿司と天ぷらが大好きです。
[web] lenski.nz
[blog] ameblo.jp/hikonz
[IG] www.instagram.com/hiko_toogood/
www.facebook.com/hisae.toogood.3

取材・編集 GekkanNZ

この記事の内容は個人の過去の体験談です。必要な場合は、最新の情報をご確認ください。

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