旅行業界から建築業界へ
オークランドの工務店、サムライビルダーズのダイレクターを勤める加藤さんは、異例の転身を遂げた経営者の1人だ。1997年にニュージーランドに初めて訪れ、パーマストンノースの大学で観光業を勉強。カリキュラムの一貫でオーストラリアへの渡航も経験し、その後日本へ帰国。旅行会社に就職したが、日本での生活に慣れず、海外で生活がしたいとニュージーランドを再び訪れた。ニュージーランドでも始めは日系旅行会社に勤務していたが、移住して数年が経った時、今までの経歴を捨て、全く経験がない建築業界へ転身した。
「もともとものづくりが好きだったんで」と明るく転身の理由を話す加藤さん。旅行業界を引退後は、ローカル企業で大工としての経験を積み、持ち前の行動力で2012年6月にサムライビルダーズを立ち上げた。「起業して8年半が経ち、ローカルスタッフや日本人スタッフなど、計17人のチームでチャレンジしています」今では日本人経営の腕利き工務店として、一日に同時に数件の現場をこなしている。
チームワークで現場を動かす
サムライビルダーズは内装工事やリノベーションを得意とし、店舗の内装工事では、日本食店を含む数多くの有名レストランや、リテールショップの内観を、短期間で美しく仕上げてくれる。住宅リノベーションでは、間取りの変更から新しい内装の取り付けまで行っている。
「ニュージーランドでは、築何十年にもなる木造建築にとても価値があり、築100年を越す木造住宅が高値で取引されるほどです。こうした築年数の長い住宅では、カウリなどの高価な木材が使用されている場合が多く、住宅リノベーションの現場では、使われている梁(はり)や柱を活かす内装にしたり、古材や廃材を再利用する事も心がけています」
実際、この取材のために訪れた現場も、築100年になる木造建築のヴィラのリノベーション現場だ。この物件のサムライビルダーズの施工では、ニュージーランドらしい外観はそのままに、間取りの入れ替えと庭の水道管工事を行い、さらに庭にある離れを、キッチン、シャワールームのついた小さな一軒家へリノベーションするのだそう。この日の現場では数名のスタッフと、分業になるため依頼したローカル企業のスタッフと協力して作業にあたっていた。「毎日仕事が違うので、チームワークが重要。一つの現場を施工している間に、次の現場の準備に取り掛かったり。僕はみんながハッピーに働けて、時には技術を伸ばし合えるように〝ピリ辛〟にしたり、メリハリを大切に業務にあたっています」
今日初めて会ったというローカル企業のスタッフとも、すでに打ち解け、スタッフ全員が楽しそうで、明るい現場になっていた。
「とても良いチームで仕事に当たれています。顧客のリクエストに応えながら、8年半やってきて思うのは継続は力。これからも長くやっていきたい。」と今後の目標を話した。
Samurai Builders / 加藤 祐介さん
Samurai Builders Ltd.
Ph: 027-664-2917
E-mail: info@samuraibuilders.co.nz
Web: www.samuraibuilders.co.nz
取材・文 GekkanNZ編集部
2021年2月号掲載