2021年12月号掲載
またまた前回のクリスマスケーキ作りから1年が経った。タイヘンなので年に一度しか作らないそのケーキは、ドライフルーツがたっぷり入った英国風のケーキで、ニュージーランドでクリスマスを祝うのにも不可欠なものだ。あ〜、これが日本の生クリームのスポンジケーキにサンタさんが乗っかってる〜みたいなケーキだったら、まだ手作りも気楽なのに(そういうクリームのデコレーションケーキなら年に何回か作る)、こっちのケーキときたら、下ごしらえ面倒、焼く時間長い、熟成時間もっと長い、アイシング失敗しがち…そして、やっとこクリスマスに食べる頃には、なぜかあんまり人気ナイ!というわけで、準備を始める10月の終わり頃はほんとに気が重いのだった。
だったら市販品で済ませてもいいのに、なぜかわたしには前々からの夢があった。自分で最高においしいケーキを作れるようになって、毎年のクリスマスの楽しみにしたいという夢が…それで、少しずつレシピを変えながら年に一回コツコツと作り続け、どうにかこうにか納得のいくものに近づくようになってきた。そして、好みのとおりに仕上げたいあまり、去年などはとうとう、実はあのケーキに付き物のアイシング(白いお砂糖のペースト)がキライ…ということまで白状したのである。その上で、アイシングを使わないで仕上げる方法もちゃんとあるのを見つけた。多分あれは、型に流し込んだ生地の上に、そのまま大きめのドライフルーツで飾りをつけてから焼けばいいのだ。そうすればもう「この甘すぎるアイシングだけは、どうにかならないもんかなぁ〜!」という心の声から解放される…と信じて、ワクワクしながら焼いたっけ…。
ところが、去年のケーキの出来に、やっぱりわたしは納得いかなかった!アイシングをかけない場合のデコレーションは、赤と緑のチェリーやナッツがケーキの上にすき間なく美しく並べられ、クリスマスのイルミネーションさながらのカラフルさでキラッキラ〜!と輝いているのが理想である。それなのに、ケーキを焼く前に飾ってしまったフルーツは、焼き上がったら半分生地に埋没し、色もガッカリするほどくすんでしまって…あっ、この方法じゃダメだった!と思った時にはもう遅かった。ケーキの味はほぼ完璧、でも見た目はコレじゃない感がすごく、またわたしは一年近くもモンモンし続けたのである。
それでも、今年こそは…とこりずに土台のケーキは焼いた。デコレーション用のドライフルーツは、彩りを考えてまた別に手作りする計画である。ラッキーなことに(?) ニュージーランドは夏であり、生のフルーツならいろいろと手に入る。オレンジのスライスは飴のようにカリッカリに、キーウィフルーツやパイナップルは旨みを閉じ込め半生に…と丁寧にドライフルーツにして、美しくケーキに並べるのだ。それをつややかなジャムでコーティングすれば、キラッキラのケーキが〜!うわ〜、そこまで頭で考えたら、今年こそ見た目も味も理想のケーキで迎えるクリスマスしか想像できない…ってごめんなさい!これを書いているのは11月の半ばであり、またもや完成品の話には至らないのでございます。今はコツコツ、ケーキにブランデーをしみこませながら、飾り用のフルーツも試作中。結果が出るのはクリスマス…なので、話の続きは来年に!(また⁉)
*Tuckerとはキーウィ独特の言葉で、「食べ物」というよりは「お腹に詰め込むもの」という意味
マツザキ リカ
ニュージーランド在住25年。クライストチャーチを拠点に暮らし、心も体も豊かにするキーウィフードの探求に余念がない。おいしいものも不思議なものも、いただきます!