Good Kiwi Tucker! vol.194  短い間に出会いと別れ⁉︎ ドキドキの赤いキーウィフルーツ

Good Kiwi Tucker! GOURMET

2022年6月号掲載

あんまり大きい声では言えないが、わたしはキーウィフルーツが苦手だ。特にグリーン…。ニュージーランドにずっと住んでるくせにと思うし、国を代表する果物を悪く言うつもりもないけれど、もともと酸っぱいものが得意でなく、アレルギーもあるのか、あのツブツブのタネが口の中で残るような感じがいまいちダメで…食べなきゃいけないシチュエーションではなんとか口にするものの、ほとんどの場合「うっ、酸味が…タ、タネが…」と思いながら飲み込んでいる。ゴールドキーウィの方ならそれほど酸っぱくないし、甘味も強い…が、こちらはなぜかあっという間に熟れすぎになるので、真の食べごろ?というものを捉えることができず、いつもややグジュっとしたのを食べては首を傾げている。本当は大好きでいたいのに、気難しいわたしでゴメンよ、キーウィフルーツたち!

そんなところに、日本の友だちから興奮ぎみのメッセージがやってきた。〝今日スーパーで、ニュージーランド産のルビーレッドのキーウィフルーツを発見!〟というのである。画像もあって、不思議な赤いキーウィフルーツの姿がそこに…なるほど、一見ゴールドキーウィのような切り口に、中心からパアッと花火のような赤い模様がある。果肉もほんのりと赤みが差して、これは華やか!果物が好き、新しいモノが好き、そんな日本の人々には特にグッとくるはず。さすがにもうキーウィフルーツにはときめかないだろう、と決めつけていたわたしですら、実物が見たくて心がグラつくほどだもの。

しかし、このルビーレッド、うちの近所では全っ然見かけない。どうやら4月、5月にしか収穫されない希少な種類らしいし、日本みたいに騒がれないから逆に本国では出回らないのだろうか?

出会えたね ルビーレッド!!
イラスト リカ

日本では、先ごろ訪日したジャシンダ首相がみずからプロモーションまでなさったくらいのキーウィフルーツだから、ルビーも当然需要のある国に行ってしまうのか…と、いじけた気持ちでスーパーや八百屋さんを見て回ったけど、あるのはグリーンとゴールドばかり。そして、5月も半ばになろうかという頃…あった!やっと見つけたルビーレッド!赤い小ぶりの箱に入って、スーパーではない小さなお店にひっそりと置かれているとは…うっかり見逃すところだった。

その実たちはまた、グリーンやゴールドよりも小さめで、そうっと箱から出してみると、もうカチカチではない様子。この〝カチカチではない〟状態が、キーウィフルーツにはとても大事だ。すでに食べなさいの合図が出ている!でも…こんな買ったばっかりで酸っぱかったらイヤだなあ。おそるおそる2つに切ってみると、すうっとナイフが入って、きれいな赤の断面が〜!もう、その色だけでドキドキだけど、問題は味である。果たして、この色につられたわたしがいけないのか、パクッと一口、どうだ?

えー皆さま、わたくし前言を一部撤回いたします。だってこのルビーレッド、好きすぎる!じつにいい甘さで絶妙なやわらかさ、タネもまるっきり気にならない。以降パクパク食べ続けて、もうすぐ一箱(8個入り)なくなりそうだし、かわいい切り方も一生懸命考えたりして、何だろうこの浮かれ方⁉理想の果物に出会えたから?でも…忘れてた、ルビーレッドは短い旬がもうすぐ終わってしまうのだ。しばしさよならわたしの恋…じゃなかったルビー!また来年も、きっと探すから‼

*Tuckerとはキーウィ独特の言葉で、「食べ物」というよりは「お腹に詰め込むもの」という意味

マツザキ リカ

ニュージーランド在住25年。クライストチャーチを拠点に暮らし、心も体も豊かにするキーウィフードの探求に余念がない。おいしいものも不思議なものも、いただきます!

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