2022年10月号掲載
2年ぶりにクライストチャーチで開催されたザ・フードショーに出かけてみた。アリーナにびっしり出店されたニュージーランドの食品会社のブースを巡り、試食ができるものはバンバンお試し!もともと好きなものはつい味見をしちゃうし、逆になかなか買う勇気のない新商品の味も知ることができたり、このイベントには発見がいっぱい。さて、今年は?
この国の食べ物というと、ちょっと保守的なイメージがある。ホームステイなどでもあまりめずらしいものは出ないし、食に関して冒険しない人が多い気が…。ところがフードショーにはなかなか“攻めてる”ものも出る。特に今年は『プラント・ベース』の商品がトレンドなんだなぁ〜と即座に感じたわたしであった。あら、プラなんとか…って初めての言葉ですか?じゃあ試食しましょう。ぱっと見は、ふつうのホットプレートの上でジュージュー焼けているお肉。それを小さく切ったものが、試食用のトレーにいっぱいのっているから、つまようじで刺してパクッ!う〜ん、焼きたておいしい〜!
いやコレ、お肉でしょ、ちがうの?『プラント・ベース』とは、そのまま訳すと植物由来…つまり、このまるっきりハンバーグの味と形をしているものが、肉じゃない何かでできている、ということだ。 そして、わたしのようなお肉大好き人間にもおいしく感じられる…。調べてみると、こういうひき肉の食感と味に近づけられる材料の一つが大豆の粉なのだという。えー、以前ベジタリアンの友達に食べさせてもらった大豆ソーセージは、もっとお豆腐に近かったり、豆そのものやスパイスのくせが強かったりした。だからその頃は、いくら体に優しくて動物保護になるとはいえ「コレ食べてお肉の代わりにしなさい」なんて無理に決まってる!と即却下だったのに。
なんと、今回のショーで試食したお肉…じゃなくていわゆる代替肉は、どれもまあまあイケてる味だった。これなら将来は、さすがのわたしも「何がなんでも肉、ニク!」と騒がなくなるかも…?この先、こういうものがさらに身近になって、値段も特別じゃなくなったら、の話だけど。
そういえばクライストチャーチにも、お肉じゃないお肉をおいしく食べられるカフェがある。なんと、仏教のお寺の建物の中に併設されたベジタリアン・カフェ、要するに精進料理のお店だ。ただでさえ野菜ばっか、しかもお寺って!そんなところで何を食べたらいいんだ…とソワソワするけれど、ここは誰でも入りやすく明るいすてきなカフェで、メニューまでテリヤキとかナゲットとか、写真を見る限りぜーんぜん野菜推しじゃない感じ⁉ そして実物も「えっ、お肉!」と目を見張るような、コッテリと焼けたおいしそう〜なナニカが運ばれてくるのだった。食べてみると、これがまた限りなく“肉”に近いのがすごい。かじっても肉、味も肉。でもこれも、豆腐とかコンニャク的な食材をお肉に似せたものなのだ。ほんとに不思議…お腹いっぱいになっても、精進料理だから体も清らか〜になるような…?それは気のせい?
結局…ライフスタイルからお肉を食べたくない人も、お肉みたいな味のおいしいものだったら食べたい、ということなのかな。わたしだって、お肉以外でもおいしければなんだって好きだ!やっぱりフードショーみたいなイベントって大事。新しい食べ物との出あいで、自分の世界も広がるのだ。
*Tuckerとはキーウィ独特の言葉で、「食べ物」というよりは「お腹に詰め込むもの」という意味
マツザキ リカ
ニュージーランド在住26年。クライストチャーチを拠点に暮らし、心も体も豊かにするキーウィフードの探求に余念がない。おいしいものも不思議なものも、いただきます!