Good Kiwi Tucker! vol.204 羊の国のイースター お祝い料理はガマンのあとに⁉︎

Good Kiwi Tucker! GOURMET

この国では、イースターのために本物のゆで卵に絵を描く習慣はない…けれど、もしそうだったら今年はパニックだったかも。折からの鶏卵の供給不足はいまだに続いていて、あいかわらずスーパーの卵コーナーはスカスカ。最近は「あっ、今日は棚が埋まっている!」と思って駆け寄ってみたら、イースター用に出回る卵の形のチョコレートが代わりに積んであったりして唖然としてしまう。たしかに、イースター前になればチョコでできた卵がお店にずらりと並ぶのは当たり前の光景だし、イースターには本物の卵より卵チョコの方が大事とも言えるから、ちょうど空いたスペースに出してみました〜というわけなのか。いや全っ然、卵の代わりにはなってないけども!かたや、やはりイースター用に売られるホット・クロス・バンズにも卵が使われているはずだけど、こちらは今年もいたるところでふつうに売られている。つまりイースターに必要なチョコやらパンやらは手に入ると見た…。でも、その二つだけでイースターって大丈夫だったっけ?

キリスト教の大事な行事であるイースターは、本来はクリスチャンにとっての禁欲の時なのだという。厳しい断食まではさすがにしないものの、あえて好きなものを一つ決めて食べるのを控え、イースターが来るのを待つ人もいるらしい。それこそ、今ではイースターの1ヶ月前ぐらい前から一般人もじゃんじゃん食べているホット・クロス・バンズも、本当は断食明けのグッド・フライデーにやっと食べてよし、となる特別なものだったとか…。そして、イエス様のご復活を記念するイースター・サンデーが来たら、そこで初めてごちそうのお肉を食べることが許されるのだ!そのお肉とは、“犠牲”の象徴とされる子羊の肉である。

羊の国らしくね…
イラスト リカ

なるほど〜、それならこの辺の人たちは今ぐらいの時期にそのためのラム肉を買うはず。スーパーに行ってみると、ラムのレッグ(骨付きもも肉)のバーンとでっかい塊が、肉売り場にゴロゴロと並んでいた。これを丸ごとオーブンに入れ、じっくり焼いたものをみんなで食べてお祝いするのだ。じゃあこれをわたしも買おう…かな…?

しかし、このラムレッグってほんとに大きい。大きい上に、やわらかくほろっほろに仕上げるには、低めの温度のオーブンで3時間も(もっと長い調理法だと5、6時間とか!)蒸し焼きにしないといけない。そうして出来上がったものは、そりゃもう美味しゅうございます〜なのはわかりきっている。でもねぇ、当然時間がかかりまくって大変なのよ。それに、このところのお肉の値段の高騰で、骨付きモモの一本買いはどこかの舞台から飛び降りるような覚悟がいりそうだし…。

結局、ほろっほろ〜のラムのローストは、スネの部位だけの骨付きシャンクを、圧力ナベで30分、ささっと加圧で完成〜!ってことにするかな。一人一本を独り占めなのも、なかなかよくない⁉ なんて、負けおしみに聞こえるって言わないでください。だって…羊の国ニュージーランドのイースターぐらい、ちゃんとラム肉でお祝いしたい一心だもの。それとも、こんなにずっと卵が買えなくて何かとガマンしてる分、イースター・サンデーには特大のラムレッグを、5時間コースでやってしまうか…。なんだかんだ、年に一度のごちそうチャンスの言い訳を探しているだけで、禁欲とかは無関係な気がする、今年のイースターなのだった。

*Tuckerとはキーウィ独特の言葉で、「食べ物」というよりは「お腹に詰め込むもの」という意味

マツザキ リカ

ニュージーランド在住26年。クライストチャーチを拠点に暮らし、心も体も豊かにするキーウィフードの探求に余念がない。おいしいものも不思議なものも、いただきます!

2023年4月号掲載

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