2019年1月号掲載
Q. フラットでモノを壊したりしていないし、特に目立った傷なども残していないのに、ボンドを返してもらえません。この国の賃貸ルールがわからず、契約書などもサインしていませんでした。この場合、ボンドを返してもらうのは無理ですか?
はじめに、テナントとフラットメイトの違いに触れておきたいと思います。前者はResidential Tenancies Act (RTA法)という法律の下でランドロードと正式契約を交わした人であり、同法によりランドロードとテナントの双方に義務と権利が生じます。具体的には、ランドロードは賃貸契約書の作成やボンドの払い戻し手続きなど、テナントは期日通りに賃貸料を納める義務などがあります。そして、双方で争いが生じた場合、Tenancy Tribunalというテナントに関する問題を扱う専門機関に提訴し解決を図ります。
これに対して、フラットはカジュアルな形での賃貸契約であり、ランドロードが住んでいる家の同居人として部屋を借りる契約(ホームステイ等)、もしくはテナントとしてすでに契約している他の同居人との契約などが一般的です。ここでのポイントは、フラットは法的な権利があいまいであり、前述のRTA法ではカバーされていないため、何か問題が発生した場合、TenancyTribunalを利用することができません。
今回のケースでは、まず手紙、メール、電話などできる手段で相手にプレッシャーをかけることが
大事です。それで解決できなければDispute Tribunalという簡易的な係争全般を取り扱う機関に提訴す
ることは可能です。この場合、客観的な証拠が重要となります。フラットの場合、契約書を書面で交わしていない場合が多いと思いますが、そこに住んでいたという事実とそれを客観的に証明できるもの(ボンドやレントの銀行記録、同居人とのメールなど)があれば、有効なフラット契約であったとみなされて、ボンド返却の決定が下される可能性はあります。
すでにフラットとして同居し契約書をお持ちでない方、今後フラットとして入居を予定される方は、Ten
ancy Serviceのウェブサイトからフラット用の契約書フォーマットがダウンロードできますので、同居人とご相談の上で、書面で契約を交わしておき、ボンドについては相手の署名と金額の入ったレシートを入手されておくことをお勧めいたします。
※本記事はあくまでも法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用いただくためのものではありません。
弁護士
Junichi Nishimura
西村純一ローズバンク法律事務所代表弁護士。オークランド大学法学部を卒業し、ニュージーランドで初の日本人弁護士となる。
Rosebank Law Barrister & Solicitor
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