2022年12月号掲載
News in Focus
2年に及んだコロナ禍からどう立ち直るかを模索しつつ幕を開けた2022年。世界は新たな冷戦の始まりや経済格差の拡大、気候変動による難問に直面した。国内外で転換点を示すような出来事が起こった。
国境再開と観光の復活
外国人の入国者数は、3月のワーキングホリデー再開や5、7、9月と段階的に入国条件が緩和される度に急増した。今年1月に6220人だった外国人の入国者数は、10月には17万7898人に回復した。それでもコロナ前の6割弱だが、観光や留学およびその関連業は息を吹き返した。今年初めには2千人前後だったビザ免除の来訪者数は、今年10月には38倍の7万5千人に達したが、コロナ前のピーク月が24万人を超えていたことから、現状の3倍になると予想される。その一方で、急な需要増加による価格の上昇や人手不足の深刻化が起こっている。
アーダーン政権支持低下
新型コロナ流行初期の封じ込めに成功し総選挙の歴史的大勝によって2期目を磐石にしたアーダーン政権だったが、今年に入って労働党の支持率が国民党を下回る事態となった。コロナ対策では国内の流行を阻止できず、規制が長引いてコロナ後に向けた規制緩和が遅れたことなどが嫌気された。今年7月に行われた統一地方選挙でも、国が進める三水道事業改革に対して批判的な傾向が出た。労働党と国民党の支持率は共に30%台で拮抗しており、グリーン党とACT党も10%台で対峙している。マオリ党やNZファースト党は議席の確保が課題となる。政権の行方をかけた総選挙は来年行われる。
物価上昇と格差拡大
今年6月四半期の消費者物価指数は、前年比で7.3%上昇した。これは1990年以来32年ぶりに高い上昇率となった。さらに燃油や食糧などの生活必需品の上昇率は10%を超えた。政府は急激な物価上昇に対する生活支援として、年収7万ドル以下の約210万人に350ドルを支給した。中央銀行はインフレを抑えるために連続的な利上げを行い、1月に0.75%だった政策金利は10月に3.5%に達した。これによって住宅価格の上昇は沈静化したが、住宅ローンが上昇したことで住宅購入の難易度は増している。貧富の差は個人間でも国家間でも拡大する傾向にあり、緊張や対立を生み出している。
Text:Kazzy Matsuzaki