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5年に1度の統計調査
3月7日を基準日として5年に1度の大規模統計調査「センサス」が実施される。日本の国勢調査に該当するもので、基準日に国内にいる全ての人が対象となり、調査に回答する義務がある。回答は調査用紙に記入するかインターネットで入力する方法があり、近年は後者が増えている。調査の説明は公用語である英語、マオリ語、NZ手話に加え、日本語を含む合計29の多言語で用意されている。国民の人種構成や様態を把握するのもこの調査の重要な目的だ。今回のセンサスでは、回答率の向上が課題とされている。2013年に92%だった回答率は、2018年は83%に低下した。特にマオリとパシフィカの回答率が68%と65%だったことで、抜本的な対策が指示された。
「1票の格差」をなくす
住居調査と住人調査からなるセンサスは、様々な政策の基礎的データとなる。最も重要な用途の一つは、選挙の区割りの見直しだ。ニュージーランドでは、各選挙区の有権者数の差をプラスマイナス5%以内にすることが法定されており、その判断の基になるのがセンサスの人口データだ。現在の選挙区は前回のセンサスを基に北島で1区増やされて49、南島に16、マオリ選挙区7となっており、各選挙区の有権者数は6万5000人の増減5%の範囲に調整されている。日本では選挙区の人口不均衡による「1票の格差」が2倍近くまで許容される現状があり、違憲訴訟が提起されるなど問題となっているが、ニュージーランドに1票の格差はない。
在留邦人は6割が女性
センサスはこの国の多民族化や高齢化の進行も浮き彫りにする。年齢毎の人口構成は「ピラミッド型」から「つりがね型」に変化し、国民の4人に1人は国外にルーツを持つ。2018年センサスで把握された日本人の数は1万8144人、男6849人に対し女1万1295人で、男女の数に大きな差がある。特に40代から70代の男女比は2倍に近い。この不均衡は一般的ではなく、日本人女性の配偶者が日本人ではない世帯が多いことを示唆する。また、日本人の収入の中央値が1万7900ドルと低いのも「夫の収入が日本人の収入に算入されない」ことが一因だと推定できる。数字は嘘をつかないが、その数値の意味や背景を吟味しないと誤解することがあるので注意が必要だ。
Text:Kazzy Matsuzaki
2023年3月号掲載