News in Focus
経済利益と分権を強調
ヒプキンス首相は、アーダーン政権が決定し巨額の広報をしたにもかかわらず、関係自治体や国民から十分な支持が得られなかった「水道三事業改革」(スリーウォーターズ)の修正を発表した。その骨子は「呼称をアフォーダブルウォーターに変更」、「統合事業体数を4から10に増やす」、「マオリとの共同統治の解釈変更」だ。アフォーダブルと冠した通り、この改革の実施によって生じる経済的な利益を強調している。水道事業の資本増強には異論がないので、その方法について合意形成を目指す。
事業体が増加の得失
南島はネルソン・マルボロとそれ以外の2事業体だったのが、オタゴ・サウスランドが分離されて3事業体になった。一方、3事業体だった北島は、7事業体へと倍以上に増えた。区分変更がなかったオークランド・ノースランド地域で変更前後の費用負担を比べると、旧案では同地域の住民負担は改革によって4300ドルから1220ドルに軽減されるとの説明だった。それが新案では、オークランドが同3910ドルから1460ドルに軽減される一方、ファーノースでは1万6240ドルの負担が1460ドルになるとしており、同一事業区域内でも人口が少なく財力のない地方ほど、改革の恩恵が大きいことを示している。また、10事業体に増えたことでスケールメリットによる負担軽減効果は全体として減っている。
マオリ利権の保持が争点
スリーウォーターズの争点となったマオリとの「共同統治」については、「言葉の解釈上の混乱があった」として共同統治という呼び方を取り下げたが、事業体評議員の半数をマオリが占めることは変わらず維持された。マカナルティ自治大臣は「ワイタンギ条約はマオリの水利権を認めており、その法的有効性は裁判で確認されている」、「内閣が代替案を検討したとき、それを変えるつもりはなかった。それが正しいことだと思うから」と述べた。しかし、この共同管理のあり方については、民主主義と平等原則に反するとの批判がある。国民党は「水道事業について地方自治体の所有権と管理を回復し、水質管理と設備投資について厳格な規則を定め、水道事業が財政的に持続可能であることを保証する」と宣言し、ACT党 も「新提案は引き続き納税者の資産を収用し、共同統治という美名で先祖による国民の分断を許容する」と批判した。
Text:Kazzy Matsuzaki
2023年5月号掲載