政権のゆくえ小党の手に
総選挙まで5カ月となった5月に実施された世論調査では、与野党の二大政党の支持率が拮抗しており、少数政党であるマオリ党が、政権のゆくえを決める展開となっている。労働党の支持率が36%に対し、国民党は35%で共に微減。労働党と連立するグリーン党の支持率は8%、国民党の側に立つACT党が11%で、共に現状を維持。これに対して労働党から議員1人をリクルートすることに成功したマオリ党は、支持率を倍増させて3.5%とした。これらの支持率を議席数に換算すると、労働党とグリーン党で56議席なのに対し、国民党とACTは59議席だが、どちらも過半数の61議席に届かず、マオリ党の5議席が政権の決め手になる。しかし、国民党はマオリ党と組む可能性を否定している。
ホステル火災で対策強化
先月ウェリントンで発生したホステルの火災は、死傷者が20人を越え宿泊者92人が避難する大惨事となった。1971年に建設されたこのビルは4階建てで、1階は商業施設、2階以上が2006年からホステルとなり 92室の客室があった。大規模なホステルにもかかわらず、築年が古いためスプリンクラーの設置は義務づけられておらず、今年3月の建物検査も合格していた。ヒプキンス首相は住宅大臣に対し、高密度な宿泊施設の建築規制が目的に適合しているか検討するよう要請した。防火対策の強化は正しいが、それによって同種の施設が廃業に追い込まれたり、料金の上昇を招くことになり、その皺寄せは経済的な弱者が受けることになる。
製鉄のCO2排出を削減
政府は製鉄所で使用する熱源を石炭から電力に転換する過去最大のCO2排出削減プロジェクトを発表した。南オークランドで1969年から稼働しているグレンブルック製鉄所は、砂鉄を石炭で溶かして鉄を生産しているが、この方式はこの国の温室効果ガス排出量の2%に当たる多量のCO2を排出する。この製鉄プラントを、電気炉で鉄スクラップを溶かしてリサイクルする方式に転換することによって、排出量を半減させる。この国の電力の8割は再生可能発電だ。削減されるCO2の量は年間80万トンで、これは30万台の車の排出量に相当するという。この転換に必要な費用は3億ドルで、1億 6,000万ドルを企業が負担し、1億4,000万ドルを政府が補助する。
スキー場の倒産回避
会社更正法の適用を申請をしたルアぺフスキー場の救済について、産業雇用省は事業継続の入札に応じた4社から2社を選定した。ルアぺフスキー場は、エベレストの初登頂で知られるエドモンド・ヒラリーが、1954年に最初のチェアリフトを開設した歴史あるスキー場で、2019年には産業雇用省とANZ銀行が1,500万ドルを投資したゴンドラが運行を開始した。しかし、コロナ禍による閉鎖に加え、昨年はこの数十年で最悪のシーズンとなったことで、経営が行き詰まってしまった。事業を引き継ぐ企業が決まったことで苦境を脱したルアぺフスキー場だが、過去20年続く訪問者の減少傾向を克服できるか、見通しがきかない中での滑り出しが試されている。
Text:Kazzy Matsuzaki
2023年6月号掲載