条約原則法案に抗議する「ヒコイ」最大5万人が集会
11月11日にニュージーランドの北端ケイプ・レインガで始まった、条約原則法案(Treaty Principles Bill)に対する抗議デモ「ヒコイ(Hīkoi mō te Tiriti)」は、オークランドやロトルアなどの主要都市を通過しながら北島を縦断し、11月19日には首都ウェリントンの国会議事堂前で集会を行った。警察によると、ヒコイがウェリントン中心部に到着するころには集団は5万人ほどに人数を増やしていたが、1人の逮捕者と数件の医療事故を除けば順調かつ安全に遂行されたという。条約原則法案の立案者であるACT党首のデイヴィッド・シーモア氏は、国会議事堂前庭に短時間姿を現し、「法案を廃案にしろ」というコールに遭遇しつつも抗議者らに手を振った。条約原則法案はワイタンギ条約の原則を明確にすることを目指しているとされるが、議会ではほとんど支持が得られていない。11月14日には、この法案についての最初の審議で、マオリ党のハナ・ラフィティ・マイピ・クラーク議員がハカを踊りながら法案を破り捨てた動画が世界で7億回視聴され話題となった。
アメリカ人がニュージーランド不動産を切望
ニュージーランドの高級不動産会社サザビーズ・インターナショナル・リアルティ(Sotheby’s International Realty)によると、ドナルド・トランプの再選により、ニュージーランドの不動産の検索が急増した。アメリカ大統領選挙の結果発表後、ニュージーランドの不動産に対するアメリカからの関心がサザビーズのウェブサイトで421%、一般のニュージーランドサイトで112%に増加。特に、バージニア、オレゴン、ノースカロライナなど、トランプが勝利した州からのアクセスが急増している。アメリカ人は特に農村地域の物件に高い関心を示しているが、オークランドやウェリントンなど都市部の物件にも興味を持っている。ニュージーランドには外国人の不動産購入を制限する法律があるので、多数のアメリカ人がすぐに家を買って移住してくる可能性は低いが、トランプの政策がアメリカの経済や社会に影響を与えた場合、さらに関心が高まる可能性がある
ニュージーランドの労働市場低迷:失業率4.8%
ニュージーランドの労働市場が弱体化している。9月四半期の失業率は4.8%に達し、労働力参加率は71.2%、雇用率は67.8%に低下した。オークランドでは今年1年で10,000件以上の雇用が失われた。1つの求人に1,000人の応募者が殺到することもあるという。最も大きな打撃を受けているのは建設業で、低価格・高い建設コスト・高い金利環境により後退している建設業では大幅な人員削減が行われている。専門職や管理サポート職でも大幅な雇用喪失があり、過去1年間の失業総数の20%弱を占める。小売業と宿泊業の失業者は全体の約13%だった。雇用が最も増加したのは医療と社会扶助の分野で、3.9%増となった。ヘルスケアは過去1年間で唯一成長を続けている部門である。キウイバンクの経済学者、サブリナ・デルガド氏は、失業率は来年後半には5.5%に達する見込みだが、2026年には回復する可能性があると示唆している。
日系製紙会社、ニュージーランド最大の製紙工場での生産中止を検討
王子ファイバーソリューションズ(Oji Fibre Solutions)は、2025年6月にニュージーランド最大の製紙工場・キンリース工場での製紙生産を停止することを検討している。正確な削減人数はまだ不明だが、230人の雇用に影響を及ぼす可能性がある。工場の所有者である王子ファイバーソリューションズCEOのジョン・ライダー氏は、「製紙生産は数年にわたって大きな損失に見舞われており、状況が改善する見込みはない」と述べた。製紙生産を中止し、パルプに重点を置くことで業務の簡素化を目指しているという。同社は工場の従業員との協議を行い、2025年1月末までに決定を発表する予定だ。工場のあるワイカト南部では、地元の人々の多くがこの工場に依存している。サウスワイカト市長のゲイリー・ペトリー氏は、地域のすべての関係者と協力して、工場閉鎖の影響を緩和する方法を検討していると述べた。
社会
ニュージーランドからの頭脳流出が止まらない
ニュージーランド統計局(Stats NZ)は、ニュージーランド国民の長期出国者数が増加の一途をたどっていると発表した。ニュージーランドへは今年9月までの過去1年間で79,700人が長期出国し、24,900人が長期帰国しているため、流出ロス(ネット・マイグレーション・ロス)は54,700人になる見通しだ。統計局によると、ニュージーランド国民の長期出国者の54%がオーストラリアへ向かっているという。ASBの上級エコノミスト、マーク・スミス氏は、年間の入国者数の減少と出国者数の増加は過去最高を記録していると述べている。ウエストパックの上級エコノミスト、マイケル・ゴードン氏は、この傾向が続けば2025年中には流入がゼロに近づく可能性があると予測している。国民の頭脳流出により、ニュージーランドの住宅市場、国内需要、労働市場の能力を支える重要な柱が損なわれることになるだろう。
ギャング法2024:新法に基づきギャングのワッペンが禁止に
11月21日、ギャング法2024が施行され、警察はその日のうちに6人を逮捕し、5人へ出廷を命じた。警察が最初に違反者を捕まえたのは、ギャング法施行開始3分後、午前12時3分のことだった。51歳のネーピア在住の男が公共の場でギャングのマークを掲げていたところを警察に止められ、出廷を命じられた後、ギャングのマークは押収された。ギャング法2024(The Gangs Act 2024)は、公共の場でのギャングのワッペンの掲示を禁止することで、ギャング関連の犯罪や脅迫の撲滅を狙って作られた法律。ポール・ゴールドスミス法務大臣は「ギャングのワッペンを着用する権利を獲得するには、暴力犯罪を犯している必要がある。ギャングのワッペンの裏には必ず犠牲者がいる」と述べた。警察は、あらゆる違反行為を積極的に取り締まるとし、重点犯罪者を特定し、逮捕するために、全国に新たなギャング撲滅部隊を設立している。
ニュージーランド政府、数学の学力向上支援を試験的に実施
政府は来年、約2,000人の生徒を対象に数学の「集中的な」小グループ指導を実施する予定でいる。このプログラムは学力が遅れている生徒を支援するもので、0年生から8年生までを対象とし、全国の学校で2025年の1学期に12週間にわたって実施される予定。2025年には、同時に数学カリキュラムが一新され、新しい教育資材や教案が学校に提供されるという。かかる費用は約200万ドルと発表された。カリキュラム進捗調査(Curriculum Insights and Progress Study, 通称”Cips”)によると、8年生のうち数学の必要なカリキュラムレベルに達したのはわずか22%だったとのことで、この統計と現場からの懸念に危機感を抱いた政府がプログラムを立ち上げた。2025年までに8年生の80%がカリキュラムレベルに達することを目指している。このプログラムの試験運用の結果を評価し、全国規模に拡大するかどうかを決定することになる。
ノースランドの若者の自殺検死:児童福祉サービスのリソース不足が浮き彫りに
2018年~2020年にノースランド地方で12歳から16歳までの若者6人の自殺が相次いだ件を受け、検死官による調査が行われた。調査では、亡くなった若者たちが直面していた精神的な苦悩や、学校や家庭でのいじめや虐待などの経験が彼らを追い詰めた可能性が指摘されていただけでなく、子ども省(Ministry of Children, Oranga Tamariki)の対応にも問題があり、適切な支援が提供されなかったことが明らかになった。学校カウンセラーの不足やヘルプラインの不十分さなど、メンタルヘルス支援の体制自体に深刻な問題があることが浮き彫りになり、子ども省の職員不足や、ケースワークの過負荷も問題視されている。この悲劇的な事件はニュージーランド社会全体に大きな衝撃を与え、メンタルヘルス支援の強化や、児童虐待防止対策の改善を求める声が高まっている。
生活
郵便配達、週2回に削減される可能性
政府は、ニュージーランド郵便(NZ Post)との合意文書を変更し、現在は都市部で週3日、農村部では週5日行われている郵便配達の頻度を、都市部では最低週2日、農村部では週3日に変更することを提案している。この文書が最後に見直されたのは2013年で、これ以後ニュージーランドのデジタル化は大幅に改善されている。郵便物の流通量は2002年には年間約10億通だったが、2023年は1億8,700万通にまで落ち込んでおり、2028年までに1億700万通に減少すると予想されている。ニュージーランド郵便は、国民の需要に応えながらも、商業的持続可能性を達成するため郵便局のネットワーク維持にかかるコストをカットすることが求められている。ビジネス・イノベーション・雇用省(Ministry of Business Innovation and Employment)は、協議プロセスの一環として国民からの意見募集も行っている。
オークランドの公共交通機関でAT HOPカード以外の非接触型決済開始
11月17日、オークランド交通局(AT)のバス、電車、フェリーの運賃の支払いがAT HOPカード以外でもできるようになった。バス、電車、フェリーに搭載される新しいカードリーダーでは、従来のAT Hopカードのほか、Apple Pay、Google Pay、デビット カードとほとんどのクレジットカードが利用可能になった。この技術は当初、今年6月に導入される予定だったが、11月まで延期された。この機能は標準の大人運賃にのみ適用され、割引運賃には適用されないため、学生カード、ユースカード、ゴールドカード、その他の割引運賃を利用する人は引き続き AT Hopカードを使用する必要がある。AT公共交通局長のステイシー・ファン・デル・プッテン氏は、「この変更により、観光客、訪問者、たまに利用する人、初めて利用する人など、より多くの人々にとって公共交通機関がより魅力的なものになるだろう」と述べている。
ニュージーランド最後のゾウ、オーストラリアへ
11月12日、ニュージーランドに唯一残されたゾウ、バーマ(Burma)がオークランド動物園を去った。バーマは南オーストラリア州の動物園に移送され、今後はそこで大きな群れの一員として過ごすことになる。オークランド動物園では過去数年に渡り、持続可能な象の群れを作るためゾウの繁殖を試みてきたが、残念ながら成功には至らなかった。動物園でゾウに必要な長期的な未来を与えることができないと判断し、動物の福祉を第一に考え、本来群れで生活するゾウを群れに戻すという決断をした。2022年にオークランド動物園で飼育されていたアンジャリー(Anjalee)をオーストラリアのタロンガ・ウェスタン・プレーンズ動物園(Taronga Western Plains Zoo)に、今月バーマを同じくオーストラリアのモナート・サファリパーク(Monarto Safari Park)に移送。2頭とも無事に到着し、アンジャリーは現在妊娠中だという。バーマが去った今、ニュージーランドにはゾウがいなくなった。今後も飼育予定はない。
クイーンズタウンにニュージーランド初のアドベンチャー・スイング
アドベンチャー旅行会社のパイオニア、AJハケット・バンジー・ニュージーランド(AJ Hackett Bungy New Zealand)は、国内初となる3人乗りのバンジー・スイングの認可をクイーンズタウン・カウンシルより受けた。「カワラウ・スイング(Kawarau Swing)」は、カワラウ川の南岸のプラットフォームから出発し、美しい川を横切って高さ35メートルをスリル満点にスイングした後、プラットフォームまでけん引される。1人乗り、2人乗り、3人乗りの乗り物が用意されており、バンジージャンプのアドレナリン全開なスリルと、ジップラインのちょっとしたドキドキの間くらいのちょうど良いバランスのアドベンチャーを実現する。スイングの詳細な設計は夏の間に完了し、来年の冬までには稼働可能になる予定だ。開発の一環として、カワラウ渓谷の北面に沿って約2,000種の在来種が植えられることになっている。
芸能・スポーツ
ゴルフ:ニュージーランド・オープン2025情報
ニュージーランド人ゴルファー、ベン・キャンベルは、現在アジアン・ツアーで4位にランキングされている。来年2月から開催されるニュージーランド・オープンでの優勝を視野に入れ、まずはフルタイムLIVゴルフカードの獲得を目指し、11月末のカタール・インターナショナルシリーズ、12月初のサウジ・オープンでの好成績を狙っている。キャンベルは過去に2度、ニュージーランド・オープンで準優勝し、ミルブルック・リゾートで行われた今年3月の大会でも10位タイの成績を収めた。一方、同大会で初めてのプロ勝利を飾った幡地隆寛は、再びミルブルック・リゾートでタイトル防衛を狙う。幡地は5月の関西オープンでも勝利を収めており、連覇を目指して大会に臨む。ニュージーランド・オープンは2025年2月27日から3月2日まで開催され、スカイスポーツがライブ放送を行う予定だ。
2026FIFAサッカーワールドカップ予選:オールホワイツの活躍
10月から11月に行われたワールドカップ・オセアニア予選の第2ラウンドで、ニュージーランド代表・オールホワイツの躍進が続いている。バヌアツ戦の8-1での大勝、タヒチ戦の3-0での勝利に続き、強豪サモア戦でも8-0と圧勝。第3ラウンド(準決勝、決勝)への出場権を獲得した。あと2勝でニュージーランドのサッカーの歴史に新たな一片が刻まれることになる。第3ラウンドは来年3月にニュージーランド(ウェリントン、オークランド)で開催予定で、準決勝ではフィジーと、決勝ではニューカレドニアかタヒチのどちらかと対戦する予定だ。オールホワイツは2010年にワールドカップ本戦に出場しているが、その後は予選敗退が続いている。一方アジア予選では、日本代表・サムライブルーがアジア最終予選の第6戦で中国を3-1で破り、グループリーグの首位を独走、ワールドカップ本戦出場に王手をかけている。
ニュージーランド航空の新作機内安全ビデオ:スティーブン・アダムス、ヴァレリー・アダムス、トム・セインズベリーらが出演
ニュージーランド航空の機内安全ビデオ第23弾となる今回の新作には、ニュージーランドのバスケットボールスター、スティーブン・アダムスと、その妹のヴァレリー・アダムス、コメディアン兼俳優のトム・セインズベリーなど、多くのニュージーランドの有名人が出演している。安全ビデオは、アダムズが地元のティーンエイジャーたちとバスケットボールの試合を繰り広げるストーリーになっているという。ニュージーランド航空の畿内安全ビデオの特徴は、安全指示をエンターテイメントと組み合わせてあることで、今回のビデオでも楽しさの中にも必要な情報が確実に伝わるような工夫がされている。また、ビデオではバスケットボールにちなんだ歴史的な瞬間や、NBAのバスケットボール選手、レブロン・ジェームズへのオマージュも含まれており、最高のエンターテイメントとなること間違いなしだ。
コールドプレイ、8年ぶりにニュージーランドに凱旋
イギリスの人気ロックバンド、コールドプレイが、11月13日、15日、16日の3日間にわたりオークランドのイーデン・パークでライブを行った。コールドプレイのニュージーランドでの公演は2016年以来8年ぶり。ライブは「Music of the Spheres」ツアーの一環として行われ、2022年3月の始動以来、世界各地で記録的な動員を達成している。オークランドでも初日だけで57,000人の観客を動員、観客が腕に付けたライト付きバンドや、巨大な風船、紙吹雪が会場を彩った。セットリストには「Yellow」や「Viva la Vida」など懐かしのヒット曲から最新のヒット曲までが含まれている。ボーカルのクリス・マーティンは観客との交流を楽しみながら、時折アドリブでユーモアを交えて盛り上げた。このライブに参加するために全国のファンがオークランドに集まったため、この週の国内線需要は昨年の87%増だったという。