失業率5.1%、過去15年間で最大の年間雇用減少
2024年の第4四半期にニュージーランドの失業率は5.1%に上昇し、前年同期の4.8%から増加した。年間では失業者数が3万3,000人増加し、合計15万6,000人に達した。統計局(Stats NZ)のデータによると、雇用率は67.4%に低下し、これは2009年以来最大の年間減少となった。雇用減少は特に男性が顕著で、技術職や機械オペレーターなどの職種での減少が目立った。しかしフルタイム雇用が減少する一方で、パートタイム雇用が増加する傾向も見られた。男性のフルタイム雇用が年間3万6,000人減少に対し、パートタイムは9,000人増加した。女性のフルタイム雇用は5000人減少し、パートタイムの変化はほとんどなかった。経済活動の低迷と企業のコスト削減により、失業率は2025年の前半に5.5%まで上昇し、その後徐々に改善すると見込まれている。
ニュージーランド、「最も政治的腐敗が少ない国」表彰台から滑り落ちる
ニュージーランドは、国際的な汚職認識指数(Corruption Perception Index)で過去最低の4位となった。1993年から毎年発表されているこの指数で、ニュージーランドは長年1位を維持していたが、過去10年間で徐々に順位を下げ、2024年は4位に。トランスペアレンシー・インターナショナル・ニュージーランド(Tinz)のCEOジュリー・ハギー(Julie Haggie)氏は、順位の低下よりも、国内のスコアが長期的に下落していることがより深刻な問題だと指摘。政府の透明性や説明責任の欠如が国際的に懸念されており、特にロビイングの透明性、政党資金調達、情報公開法(OIA)の制限が課題として挙げられた。調査対象の180か国中、1位はデンマーク、2位はフィンランド、3位はシンガポールだった。オーストラリアは2ランク上昇して10位、米国は3ランク低下の28位、日本は2ランク低下の20位だった
ロケット・ラボ、米ブラックスカイの軍事衛星を打ち上げへ
ニューヨーク証券取引所に上場しているニュージーランド発のロケット・ラボ(Rocket Lab)は、米国企業ブラックスカイ(BlackSky)の軍事衛星「Gen-3」をマヒア半島(Mahia Peninsula)から打ち上げる予定だ。同社は2024年に米国防総省と800億円を超える契約を結び、極超音速兵器の開発支援や低軌道衛星ネットワーク「Proliferated Warfighter Space Architecture(PWSA)」向け軍事衛星の設計をすすめるなど、米国主要防衛請負業者としての地位を確立した。「Gen-3」は、高性能カメラを搭載し、霧や夜間でも高精度な画像撮影が可能で、データ送信速度は10倍向上させる技術が導入される予定。同社は、米国防総省向けの「エレクトロン」ロケットを開発し、打ち上げ回数でSpaceXに次ぐ地位を築いている。また、極超音速兵器の開発にも関与し、複数回の打ち上げ試験を実施するなど、今後も米国の防衛技術強化に貢献すると見られる。
公式キャッシュレート引き下げ
ニュージーランド準備銀行(The Reserve Bank、以下RBNZ)は、2月の金融政策声明で公式キャッシュレート(Official Cash Rate、以下OCR)を50ベーシスポイント(以下bps)引き下げ、4.25%から3.75%とした。RBNZの総裁エイドリアン・オア(Adrian Orr)氏は、経済成長が予想より遅れているため、追加の利下げを検討する可能性があると述べた。これを受け、ANZは速やかに変動住宅ローン金利を6.89%に引き下げ、ASBやKiwibankなども追随した。この利下げについては政府内でも賛否が分かれ、財務大臣ニコラ・ウィリス(Nicola Willis)氏は家計への好影響を強調したが、労働党首のクリス・ヒプキンス(Chris Hipkins)氏は、政府の政策が経済を悪化させた結果だと批判した。今後、さらなる利下げが見込まれており、RBNZの目標とする終着金利は3.1%前後と予測されている。
ニュージーランド航空減益、1億ドルの自社株買いを発表
ニュージーランド航空は、経済的な逆風やエンジントラブルの影響を受け、2025年度上半期(2024年7月~12月)の税引前利益が1億5,500万NZドルとなり、前年同期の1億8,500万NZドルから減少したことを発表した。燃料費は16%減となったが、非燃料コストの負担が業績を圧迫。エンジンメーカーから9,400万NZドルの補償を受けたものの、本来の運航ができていればさらに4,000万NZドルの利益を見込めたと試算している。取締役会長のテレーズ・ウォルシュ(Therese Walsh)氏は、困難な状況下でも堅調な業績であると評価。同社は1株あたり1.25セントの配当を実施(前年の2セントから減少)する一方、1億NZドル規模の自社株買いを発表し、長期的な成長への自信を示した。2025年通年では最大11機の運航停止が見込まれ、業績の更なる悪化が懸念される。同社の52%は政府が保有している。
中国、タスマン海で軍事演習・クック諸島と協定:安全保障上の懸念高まる
2月22日、国防大臣のジュディス・コリンズ(Judith Collins)氏は、中国がタスマン海で実弾射撃活動を行ったと発表した。ニュージーランド海軍のフリゲート艦「テ・カハ(Te Kaha)」の乗組員が、中国軍艦「遵義(Zunyi)」から実弾が発射される様子を確認したという。中国海軍は無線で演習の実施を通知したが、ニュージーランド政府は事前に正式な通達を受けていなかった。また、中国はクック諸島と新たな協定を締結し、今後5年間にわたる海底鉱物の探査・研究を含む協力を進めることに合意。合意には造船、港湾や埠頭の建設などが含まれており、中国は太平洋地域で「戦略的な影響力」を拡大できるようになると専門家は指摘している。ニュージーランドやクック諸島にとって安全保障上の影響が懸念され、ニュージーランド政府は、影響を分析すると表明している。
社会
チェルシー・シュガー、鉛汚染砂糖の販売で約15万ドルの罰金
「チェルシー・シュガー(Chelsea Sugar)」の商号で知られるニュージーランド・シュガー・カンパニー(NZSC)は、鉛が混入した砂糖を製造・販売したとして、第一次産業省(MPI)から約15万ドルの罰金を科された。砂糖が鉛に汚染されたのは、2021年9月のオーストラリアからの海上輸送中と見られる。NZSCは、サンプル検査を実施後に通常通り製造・販売し、971トンもの鉛混入製品が国内に流通した。2021年10月の検査では鉛の高濃度検出が判明したが、同社は出荷停止せず、汚染製品が販売され続けた。MPIへの報告は11月3日になってからであり、その翌日に消費者向けリコールが実施された。食品安全局(NZ Food Safety)は、NZSCの対応を「消費者への責任を果たしていない」と批判し、裁判所の判決が「同様の違反は容認されないという強いメッセージ」になったと述べた。
2024年にニュージーランドで生まれた赤ちゃんの最も多い姓名
ニュージーランドで最も多くの新生児に付けられた姓は、7年連続で「Singh」となった。内務省(The Department of Internal Affairs)によると、2024年にこの姓で登録された新生児は680人以上にのぼった。2位は「Kaur」(630人)、3位は「Smith」(300人)で、10年前に最も多かった「Smith」は徐々に順位を下げている。「Singh」はシーク教徒によくある姓で、サンスクリット語で「ライオン」を意味する。2023年の国勢調査によると、ニュージーランドでシーク教を信仰する人は5万3,000人以上だった。ファーストネームについては、2024年に最も人気のあった名前は「Noah」と「Isla」だった。「Noah」は旧約聖書に由来し、イスラム教やユダヤ教にも登場する名前で、4年連続でトップ2に入っている。「Isla」も過去5年で2回首位を獲得している。
生活
2025年ニュージーランドのベストビーチ
「Herald Travel」主催のベストビーチコンテスト2025の結果が発表された。今年は長年トップの座にあったベイ・オブ・プレンティのオホペ(Ōhope)が優勝を逃す予想外の結果に。最も注目を集めたのはノースランドのワイプコーブ(Waipu Cove)で、「ベストファミリービーチ」と「ベストキャンプビーチ」の2冠を達成し、さらに「ベストサーフビーチ」でも2位に輝いた。「ベストサーフビーチ」はワイカトのラグラン(Raglan)が優勝し、サーファーにとって最適なスポットとして評価された。「ベストシティビーチ」には、都会的な便利さと自然の美しさを兼ね備えている点が評価され、ベイ・オブ・プレンティのマウント・マウンガヌイ(Mount Maunganui)が選ばれた。「ベスト隠れ家ビーチ」部門では、ノースランドのホエールベイ(Whale Bay)が新たに王座に就いた。
食品価格上昇、2022年以来最大
2025年1月の食品価格は、チョコレート、牛乳、清涼飲料の値上がりにより、過去2年半で最大の上昇を記録した。統計局(Stats NZ)のデータによると、1月の食品価格は前月比1.9%上昇し、2024年12月の0.1%増から大幅に加速。牛乳と卵はそれぞれ6.6%、4.8%上昇。果物・野菜は2.8%上昇し、特にブロッコリーやキウイフルーツの価格が季節要因で大きく変動した。肉・魚類は1.8%増、清涼飲料は2.3%増となった。アルコールとタバコはそれぞれ1.6%、3.9%上昇した。また、ガソリン価格は4%増、ディーゼルは5.8%増と燃料費も高騰。一方で、年末年始の旅行シーズン終了に伴い、国内航空運賃は1.3%、国際航空運賃は11.7%低下した。2月19日にニュージーランド準備銀行(RBNZ)が0.5%の利下げを行ったこともあり、インフレ圧力はさらに高まる可能性があると見られている。
ニュージーランドの氷河、2000年以降29%縮小
カンタベリー大学の研究者ヘザー・パーディー(Heather Purdie)氏は、科学誌「Nature」で、ニュージーランドの氷河は2000年以降29%縮小し、世界で3番目に多くの氷河質量を失った国になったと発表した。パーディー氏は氷河を気候変動の「炭鉱のカナリア」と呼び、最も早く影響を受ける存在だと警鐘を鳴らしている。氷河の縮小は、ニュージーランド経済にも深刻な影響を及ぼす。氷河の減少によってアルプス観光の登山ルートが失われ、観光業や登山者の安全性にも悪影響を及ぼしている。さらに、氷河の減少はマオリ文化にも影響を与えており、山々の形が変わることで精神的・文化的な価値が損なわれつつある。パーディー氏は、これらの影響を食い止めるためには、温室効果ガスの排出を削減し、気温の上昇を抑えることが不可欠だと強調している。
ニュージーランドで最もガソリンが安い地域は
ガソリン価格比較アプリ「Gaspy」のデータによると、2月19日現在、ニュージーランド国内でガソリン価格が最も安い地域はティマルー(Timaru)で、最も高い地域はグレイマウス(Greymouth)だった。価格が安い地域は、他にネルソン(Nelson)、リッチモンド(Richmond)、ブレナム(Blenheim)、ハミルトン(Hamilton)で、一方高い地域は、グレイマウスに次いでタウランガ(Tauranga)、カイタイア(Kaitāia)、ワナカ(Wānaka)、テムズ(Thames)、ファンガレイ(Whangārei)だった。Gaspyによると、南島のガソリン価格下落はごく最近の傾向で、ネルソンを拠点とする割引系ガソリンスタンド「NPD」の影響が大きいという。NZドルの上昇により燃料価格は緩やかに下落傾向にあるが、国際的な政治や貿易の状況によって今後の価格動向が変わる可能性もある。
芸能・スポーツ
ジャシンダ・アーダーン元首相のドキュメンタリー映画
元首相ジャシンダ・アーダーン氏の5年間の在任期間を描いたドキュメンタリー映画『Prime Minister』が、米国のサンダンス映画祭(Sundance Film Festival)で初公開された。本作は夫のクラーク・ゲイフォード氏が撮影したホームビデオや未公開の音声記録を含む、アーダーン氏の個人的な人物像に焦点を当てたもの。批評家からの評価は「リーダーシップの稀有な記録」「政治的な議論が浅く、経済政策への言及が不足している」など賛否両論あるが、アーダーン氏自身は、映画が政治家の人間性を伝えることを願って制作に協力したと語っている。アーダーン氏は2023年に退任後、ハーバード大学のフェローや、クライストチャーチ・コールの特使として活動を続けている。サンダンス映画祭はインディペンデント映画を対象とした映画祭で、毎年約200本の長・短編映画が上映される。
女子ゴルフ:リディア・コー選手の通算獲得賞金歴代最多の可能性
女子ゴルフのリディア・コー(Dame Lydia Ko)選手は、LPGA(Ladies Professional Golf Association/全米女子プロゴルフ協会)通算獲得賞金額歴代最多になる可能性がある。コー選手は女子ゴルフ世界ランキング2位につけており、LPGAツアーの公式獲得賞金ランキングでは歴代3位に位置しているが、年間賞金635万2,207ドルを稼いだ2024年の好成績を再現すれば、1位に躍り出ると試算されている。コー選手のこれまでのLPGAツアーでの獲得賞金は3,579万2,258ドルで、歴代1位であるスウェーデンのアニカ・ソレンスタム(Annika Sörenstam)(3,994万6,487ドル)との差は約415万ドル。2月27日にシンガポールで開催されるHSBC女子世界選手権に勝利すれば歴代2位に、2025年全米女子オープンで優勝すれば、ソレンスタムを抜いて賞金ランキング1位に浮上することになる。
スーパーラグビー・パシフィック開幕
2025年のスーパーラグビー・パシフィックが2月14日に開幕した。今シーズンは、ニュージーランド、オーストラリア、フィジー、サモア、トンガ、クック諸島などから全11チームが参加。開幕戦では、2023年チャンピオンのクルセイダーズ(NZ)がハリケーンズ(NZ)を33対25で下し、ワラターズ(AUS)がハイランダーズ(NZ)に37対36で接戦を制する好スタートを切った。2月15日にイーデン・パークで行われたブルーズ対チーフス戦では裸の男性がピッチに侵入し試合が一時中断されるトラブルに見舞われたが、フォース(AUS)がモアナ・パシフィカ(太平洋諸国混合)に逆転勝利したり、チーフス(NZ)が対クルセイダーズで昨季決勝の雪辱を果たすなど、白熱した試合が展開されている。上位6チームが6月に行われるファイナルシリーズ(プレーオフ)に進出し、優勝が決定する。
シルク・ドゥ・ソレイユ「コルテオ」ニュージーランド公演
サーカス団「シルク・ドゥ・ソレイユ」が、長年にわたり愛されてきたツアー公演「コルテオ(Corteo)」を2025年10月にニュージーランド・オークランドのスパーク・アリーナで上演する。「コルテオ」は2005年にカナダ・モントリオールで初演され、これまで30か国以上で1,200万人以上の観客を魅了してきた作品。イタリア語で「葬列」を意味するタイトル通り、道化師が空想する華やかなパレードをテーマにしており、アクロバットや音楽、コメディ、幻想的な演出を組み合わせた独創的な舞台が展開される。舞台をアリーナ中央に設置し、観客が演者の視点も体験できる特別な演出となっている。公演は10月30日から11月2日まで計7回を予定。チケットの先行販売(クラブ・シルク会員向け)は2025年2月18日午前11時から、一般販売は2月24日正午から、公式サイトにて行われる。
ブラッド・ピットがクイーンズタウンで撮影
ハリウッドのスーパースター、ブラッド・ピット(Brad Pitt)が主演するとされるアメリカの映画『 ハート・オブ・ザ・ビースト(Heart of the Beast)』の撮影が3月にニュージーランドのクイーンズタウンで始まる。この映画は2017年から制作が進められているパラマウント・ピクチャーズの作品で、元海軍特殊部隊員と引退した戦闘犬がアラスカの荒野の奥深くで起きた悲惨な事故の後、文明社会を探そうとするサバイバルスリラー。クイーンズタウンで夏のアラスカを再現する予定だという。撮影は5~7週間続き、その後オークランドでポストプロダクションが行われることになっている。現在オアマルで撮影中の Netflixの大作『 エデンの東』に続き、地域の経済に大きな刺激を与えると期待されている。