シドニー大会直前(1/27〜29)!
ワールドセブンズシリーズ、ハミルトン大会結果速報!
ワールドセブンズシリーズは毎年行われる大会で、世界中の様々な都市で世界各国の代表チームが戦う。今年は女子は7都市で、男子は11都市での開催であり、日本代表も男子女子各チームが参加中だ。先月1月21、22日にはニュージーランドのハミルトンで開催されたが、試合の結果なども交え、どのような大会かNew Zealand Asian Barbarians(NZAB)の名富朗さんにお話を伺った。
オリンピック種目になり、各国がセブンズを強化中
以前はラグビーのセブンズは特定の国が強かったのですが、2016年のリオデジャネイロオリンピックからセブンズが正式競技となり、現在は各国がこの競技を強化していてその結果も出始めており、どこが勝ってもおかしくない状況です。特にセブンズは試合の流れが早く、15人制よりも番狂わせが起きやすい。観ていて非常に楽しめる競技です。現在は今までセブンズには力をいれていなかったアイルランドが強くなってきたり、アメリカやカナダなど北米の国も強くなってきています。また、サモアやフィジーなどオセアニアの、面積で言えば小さな島国も強い。こういった国で強くなった選手はどんどん海外へ出て活躍しますが、島に戻り、村の子どもたちにラグビーを教え強化しています。そうやって世代でラグビーの強化を受け継いでいき、何かの大会でその国の代表が優勝したりすれば国民みんなで喜び合います。昨年12月のワールドスクールセブンズでNZAB(大会出場名Asian Dragon 7’s)がオーストラリアの国代表を打ち破り、番狂わせを起こしてセミファイナルに進んだところでサモアとあたりましたが、前半は良いムードだったものの後半一気に流れを持っていかれて敗れました。あのサモアの選手たちも海外に出ていった先輩アスリートたちから強化を受けていると思います。
ワールドセブンズシリーズは毎年ありますが、実は各国が本当に照準を合わせているのはオリンピック。しかし、このワールドセブンズシリーズで良いパフォーマンスを見せてこそ、選手たちはオリンピックへの代表チームに選出されるんです。ですので、非常に重要な試合と言えるでしょう。
入れ替わりが激しくスリリングな展開
今はまだ序盤なので、現在の順位が維持されるとは限らないと思います。むしろ大会が進むにつれてどんどん入れ替わることが予想されるので、毎回どうなるかが注目されます。
ハミルトンセブンズ大会が終わった今、まず、女子の大会結果を見てみますと、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカが常に金銀銅のどれかをとっていて、この三カ国の力が拮抗している状態ではあります。ただ、日本に注目してみると、今大会前までは日本は14ヵ国中10位でしたが今大会では出場12チーム中6位。かなり順位を上げてきていると言えるでしょう。今回プール戦ではオーストラリアとは26対14、フランスとは26対12で負けているものの、決して弱くはないカナダには7対17で勝っています。そしてトーナメントではフランスに12対19でなんと勝つことができました。ニュージーランドやイギリスとも対戦していますが、敗れてはいるものの点差で言えば決してチャンスがないわけではない結果を出せています。この中で最下位などになってしまうとこの上位サーキットでの大会に出場できなくなり、強いチームとの国際試合の経験も減ってしまいますが、今の女子日本代表はこの上位サーキットでは中堅の位置まで来ており、昨年のワールドスクールセブンズの若い女子日本代表の活躍や強さからも、今後強くなっていけると期待でき、これからの活躍がすごく楽しみと言えるでしょう。
一方男子の大会結果を見ていくと、香港、ドバイ、ケープタウンの三大会も含めてけっこうばらけていて、今大会前までは総合的にはサモアが1位、南アフリカが2位、ニュージーランドが3位、日本は17ヵ国中15位だったのですが、今回アルゼンチンが1位、ニュージーランドが2位、そしてアメリカが3位で、総合的にはニュージーランドが現在1位の状態になったものの、まだまだばらついていてどこが優勝するのかまったく先が読めない状況です。オーストラリアは優勝もしているのに現在7位ですし、ニュージーランドは安定感はありますが優勝はまだない。フィジーは強いはずですが今年のワールドセブンズシリーズではまだ活躍していないものの、オリンピックに照準を合わせていると見られますから調子を上げてくることも予想されます。今回優勝したアルゼンチンは強い選手はどんどんヨーロッパに出て行って強化され、活躍しています。総合優勝は上位9位くらいまで可能性がありそうと言えるでしょう。男子の日本代表は今大会の試合結果で総合では一つ順位を落とし18ヵ国中16位となり、現在苦しい状況にいると見ています。
7人制強化のメリットは国代表にも選手個人にも
日本の男子7人制国代表は歴史も長く、上がり下がりもあるものの良い時期もあって、リオデジャネイロオリンピックではニュージーランドに勝って4位だったこともあるんです。ですが、今は各国が7人制を強化してきてその結果が出てきている時期で、日本の男子ラグビーとしては苦しくなってきている状況と言えるでしょう。
日本の男子のトップ選手は15人制に流れる傾向があり、それは15人制のほうがメジャーな競技だというのもあるのだと思います。しかし、選手としては7人制をやるメリットは非常に高いと言えます。パスの精度やスピード、スペースの見方、一対一での強さなど、身体的スキルは7人制をやることで格段に上がりますし、ちょっとのミスが命取りの7人制の試合では集中力も求められます。例えばニュージーランドでは7人制で活躍している選手が15人制の国代表にも入り、なくてはならない選手として非常に活躍していますし、7人制を強化できる仕組みを日本でも作ることで、どちらの競技も強化できるのではないでしょうか。
そのためにもワールドスクールセブンズなどで若い世代の選手が7人制の国際試合の経験を積むということが、選手個人としても、さらに日本代表選手の強化としても重要だと考えています。Asian Dragon 7’sのメンバーで、強烈なタックルでワールドスクールセブンズでも活躍したテソン選手は今後の活躍が期待され帝京大学へと進学します。
ぜひ若い世代の7人制を盛り上げて、日本のラグビー全体を強化していけたらと思っています。
名富朗ヘッドコーチ
大阪府出身。6歳からラグビーを始め、ダニーデンのキングスハイスクールにラグビー留学。帰国後は中部大学に進み、卒業後、宗像サニックスブルースに入団した。豊田自動織機シャトルズで通訳を務めた経験も持つ。現在はヘイスティングスの高校でスポーツコーディネーター、ラグビー部の2軍コーチ、日本語教師として働いている。写真はハレ・マキリ氏(写真右)と、AsianDragon7’sの直前合宿での指導の様子。
2023年2月号掲載
※取材時はシドニー大会前 Text: GekkanNZ